コラム

総裁選、そして総選挙へ...国民が注目すべき「経済政策」の論点とは?

2024年09月11日(水)17時32分
自民党総裁選で国民が注目すべき経済政策のテーマ

RODRIGO REYES MARINーPOOLーREUTERS

<自民党総裁選で国民が最も関心を寄せるテーマは「経済」。さらに解散総選挙も近いとされる今、争点になると考えられる経済政策について考える>

自民党総裁選の政策論争が本格化している。メディアでは裏金問題が連日報道されており、政治資金の扱いが一般世論に近いとされる党員票の行方を左右する。一方、朝日新聞の世論調査では、総裁選で議論してほしいテーマとして経済が1位、社会保障が2位となっており、投票日が近づくにつれて、経済政策の重要性が高まってくるだろう。

今年4月に賃上げが行われたこともあり、昨年と比較すると家計の状況は一服しつつある。だが、為替の状況次第では再び値上げラッシュとなる可能性もあり、金融政策の行方が国民生活を左右する。


日本銀行は7月の金融政策決定会合において突如、追加利上げを発表し、市場は大混乱となった。このまま正常化が進めば、円安は相当程度、是正される一方、金利上昇の弊害も顕著となるので、政府・日銀は慎重な舵取りが求められる。

ちなみに8月に金融政策決定会合はなく、次は9月19日・20日の開催予定だが、総裁選直前であり、大きな動きはないとみる関係者が多い。

そうなると俄然、注目されるのは10月30日・31日の会合である。本来、日銀には高い独立性が求められ、政局に左右されてはいけないはずだが、それはあくまでタテマエである。

10月の会合の結果は、次期首相が誰になるのかで大きく変わるだろう。各候補者が金融政策の正常化、言い換えればアベノミクスの継続もしくは終了についてどう考えているのか着目する必要がある。

緩和政策を継続するならリスクについて説明する必要が

金融正常化を進めれば日銀の財務体質は安定し、過度な円安も防げる一方、住宅ローンの返済や企業の利払い負担増加など景気への逆風が懸念される。こうしたマイナス面を受け入れた上で、金融市場の安定化と円安阻止を優先するのが正常化推進論者のスタンスと考えてよいだろう。

これに対して一部の候補者は、金融正常化は急がず、低い金利を維持すべきと主張している。緩和的政策を継続すれば、景気が底割れする可能性は低くなるものの、再び円安が進み、物価上昇により生活困窮が進むリスクが排除できない。

国民生活が苦しくなった場合、財政出動を行うというのがこれまでの定番だったが、インフレ下で財政出動を行うとインフレがさらに悪化してしまうのは経済学の基本原理である。景気対策を主張する候補者は、このジレンマをどう克服するのか説明する必要がある。

社会保障政策については、来年1月の通常国会で年金制度改正が予定されており、年金制度についてどう考えるのかは、候補者を評価する重要なポイントとなるだろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:またトランプ氏を過小評価、米世論調査の解

ワールド

アングル:南米の環境保護、アマゾンに集中 砂漠や草

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story