コラム

顧問・相談役制度への批判が高まっているのにやめられないワケ

2017年11月07日(火)12時30分

だが、無意識的に企業が従業員あるいは経営者たちのものだという認識が強い場合、意思決定で重視されるのは社内のコンセンサスである。だが全員が納得できるケースは少なく、たいていの場合、軋轢が生じる。こうした時に社内調整の役割を果たすのが顧問や相談役というわけだ。

結局のところ顧問や相談役という存在を求めているのは、企業の経営者や従業員自身であり、彼らはその存在を根本的に拒絶しているわけではないところにこの問題の根深さがある。もし本当に顧問や相談役の弊害を認識し、それを改善しようと考えるのであれば、日本型の特殊なガバナンスの見直しもセットにする必要がある。

所有と経営を分離し、経営者の権限と責任を明確に定義している株式会社の制度を採用している以上、その仕組みにそぐわない意思決定ルールは必ずどこかで矛盾を引き起こす。こうした問題に対する表面的な解決策は存在しないと考えるべきだろう。


【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!

ご登録(無料)はこちらから=>>


プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日経平均は急反落、一時2000円近く下落 米中摩擦

ビジネス

イオン、26年2月期は13%営業増益見込む 市場予

ビジネス

英GDP、2月は前月比+0.5%・前年比+1.4%

ビジネス

SHEINのロンドン上場、英国が認可 中国の承認待
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 3
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が見せた「全力のよろこび」に反響
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 10
    右にも左にもロシア機...米ステルス戦闘機コックピッ…
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 7
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 8
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が…
  • 9
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 10
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story