「民泊」拡大が暗示するのは、銀行のない未来
日本では「フィンテック」は金融サービスを便利にするといった程度の認識だが、実は長い歴史を持つ銀行の存在意義そのものが問われている Heiko Küverling-iStockphoto.com
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空き部屋を宿泊施設として外国人観光客などに貸し出す、いわゆる「民泊」の是非をめぐって論争が起きている。民泊が急速に普及したのは、Airbnbという海外のネット仲介サービスが日本に進出したことがきっかけなのだが、こうしたネット・サービスは、既存のサービス事業者の存在を「中抜き」してしまうという点で破壊的だ。
新世代のネット・サービスは今後、さらに普及が加速すると考えられるが、究極的な到達点は金融サービスの分野と言われている。ネットのフル活用によって、銀行すら要らなくなってしまう可能性が指摘されているのだ。
途上国のスマホ金融サービスは何がスゴイのか
昨年まで民泊は、ごく一部の利用者だけが知る、限られたサービスであった。しかし、世界最大の民泊仲介サイトであるAirbnbが日本に進出してからは状況が一変、すでに国内では2万件以上の物件が登録される状況となっている。
一般の民家が宿泊料金を取って部屋を提供する行為は厳密には旅館業法などに違反するが、政府は今年10月、特区に限定してこの規制を緩和する方針を打ち出している。東京オリンピックを控え、宿泊施設の絶対数が足りないことや、政府の規制が現実に追い付いていないことなどから、特区限定とはいえ現状追認という形になった。
民泊については、その是非をめぐって激しい議論となっているが、こうした動きは民泊の分野だけにとどまるものではない。米国など海外では、多くの業務がこうした仲介サイトによって個人に解放されており、あらゆる業界で地殻変動が始まっている。影響は様々な分野に及ぶことになるが、こうした仲介ビジネスの本丸は金融サービスといわれている。つまり銀行を介さない金融サービスが普及しはじめており、銀行の存在意義そのものが問われる状況となっているのだ。
このところ、アフリカなど途上国におけるスマートフォンを使った少額融資サービスが全世界的な注目を集めている。米国のシリコンバレー型ネット企業がこうしたサービスを手かげており、特にケニアでは、branch.coやInVentureなど多くのサービスが立ち上がっている。
途上国において少額の融資を行うサービスは、マイクロファイナンスと呼ばれており、以前から存在していた。バングラデシュの経済学者であるムハマド・ユヌス氏が立ち上げたグラミン銀行や、社会起業家であるマット・フラネリー氏が設立したKivaなどは非常に有名である。
こうした既存のマイクロファイナンスは慈善活動としてのニュアンスが強いが、最近、登場してきた新サービスはあくまでビジネスとして事業を展開している(ちなみにbranch.coの設立者は、Kiva設立者のフラネリー氏である)。だが注目されている理由はそれだけではない。融資の審査をスマホ上で自動化するという画期的な手法を導入しているからである。
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