コラム

土地持ち農家は高額な相続税を払え...英労働党の新方針が農村部で大不評

2024年12月27日(金)17時36分

農業で利益を上げて土地の価値を上昇させたわけではないし、土地価格上昇によって手持ちのカネが増えたわけでもないのに、いまや世代交代のたびに巨額の税金を支払わなければならなくなったのだ。

比較的小規模の農場は、理論的には数百万ポンドの「価値」があるかもしれず、相続税はかなり高額 (32万5000ポンド以上の遺産の場合は40%) になる。これまで農家の相続税が免除されていたのは、多くの家族経営の農場が代々受け継がれてきているから、という理由があった。

相続税は事実上、農家の破綻を意味するだろう。つまり、税金を支払うために土地の一部を売却することになる。

残る選択肢は、土地の価値に応じて融資を受けることだが、他のビジネスマンと同様に、農家はすでに生産性と収益性の向上や、設備新設などのために資金を借りている。

国に納税するために30年ごとに非常に大きな金額を借りることは、ただでさえ苦戦している農業部門の存続可能性をはるかに低下させることになるだろう。

地方労働者に優しくない労働党

農家は、自分たちが往年の土地持ち地主階級のように扱われていると感じているが、農家自身の感覚とは隔たりがある。一般的に、農業は重労働で、利益率が低く、天候だけでなくしょっちゅう変化する規則や規制にも影響される厄介なビジネスであると認識されている。

より多くの農地が売りに出されたからといって、能力の高い人々がこぞって参入したがるような仕事ではない。したがって、現在の農場所有者に土地の売却を強制することは、多くの新規参入農家の機会を創出することにはならない。

これはイギリスの農業を傷つけるだけであり、労働党政権の「典型的な」やり口だと、農家は声を上げている。

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プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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