コラム

実は暴動の多いイギリスで、極右暴動が暴いた移民問題の真実

2024年08月28日(水)18時58分

第4に、今回の暴動は、移民の一層の増加を望むごくごく一部のイギリス人にとっては恩恵となった。今や「見ろ、これこそ移民反対派の素顔だ」と言えるようになったからだ。「人種差別の悪党としか言えないじゃないか」と。

この主張は、大多数のイギリス人が暴動に愕然とし、人種ヘイトを非難し、それでも同時に大量の無秩序な移民受け入れには反対している、という事実を無視している。


人々が大規模で急速な人口動態の変化に懸念を抱くのはもっともなことで、世論調査ではイギリス人の過半数が移民の増加ペースが急激すぎると感じている。移民は2022年と2023年だけでイギリス人口に130万人を上乗せした(ブリストルとレスターを合わせた人口に匹敵)。これは、移民純増を年間10万以下に抑えるとの目標を掲げて2010年に政権復帰した保守党政権下で起こった出来事なのだ。

イギリスは、これほど急激な人口増加に対処できるほどの住宅や学校、医療を賄えない。システムに負荷がかかっている。

女性器切除や名誉殺人...以前は存在しなかった問題が

大量の移民はイギリス社会をさまざまな形で変えていて、プラスの場合もあればマイナスのものもある。例えば面白いレストランが増えたり移民が労働力不足を補って経済を活性化させたりしている。一方で、女性器切除とか「名誉殺人」とか、子供の遺伝的欠陥にもつながるいとこ同士の結婚といった、以前のイギリスには存在しなかった問題も発生している。

移民賛成を唱える少数派の立場は明確だ。多様性は本質的に良いことで、社会を豊かにするし、僕たちはそれを受け入れるべきだ、と。今回の暴動は、問題が移民にあるのではなく、むしろ移民抑制を唱える政治家たちによって移民への敵意が「あおられた」せい。代わりにイギリス人は、国境を開放して移民を「大歓迎」すべきだ。政府やメディアの仕事は、望んでいないことを望むように国民を説得すること。移民を望まない人々が、本当は望むべきなのだと気付いたときに、イギリスの移民問題は見事解決するだろう、というのが彼らの言い分だ。

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プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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