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イギリス政権交代の本当のカラクリ
とはいえ実際、彼はなんにしろ勝つことなどできなかっただろう。2つの重要な問題で、国民は保守党政権に背を向けていた。1つには、公共サービスの失敗、特に国民保健サービス(NHS)の悲惨な現状だ。
2つ目には、移民問題。純移民数は依然として減らず、大規模な不法移民の流入が続いている。奇妙なことだが、5年前に保守党に票を入れた人々が今では、「14年間に及ぶ保守党政権の失態」を振り返っては口にしている。
労働党がもっとうまくやれるかどうかはまだ分からない(「これ以上ひどくやりようはないだろう」と人々は言っている)。とはいえ、スターマーが公約していることは、概して国民に受け入れられるものだ。
ブレグジットを考え直すことはしないと言っているし、移民をきちんとコントロールするとし、NHSを立て直すために措置を講じると表明し(ただしそれには時間がかかるだろうと賢明にも付け加えて言っている)、急進主義に走らず信頼に足る経済政策を取ると話している(市場は労働党大勝利の結果に警戒の反応は見せていない)。
中道的なテクノクラート
上記の全てにおいて、スターマーは労働党の前任党首のジェレミー・コービンとは全く異なる政治的生き物であることを証明した。コービンは急進的な社会主義政策で労働党のコア支持層を熱狂させた。スターマーはどちらかというと中道的で、「テクノクラート」と呼ばれることもある。
しかし、彼について最大限に悪いことを言うとしたら、彼は明らかに政治家魂を欠いた政治家だということ。また、現時点でイギリスの有権者は、他のどの選択肢より彼がマシだと判断した、と言うこともできるだろう。

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