コラム

特権クリスマスパーティーの痛すぎるダメージ

2021年12月20日(月)11時10分

つまり、これは政策に賛成か反対か、というような単なる政治問題ではない。時間がたつにつれ、賛否両論の政治問題は大衆の関心を失っていくものかもしれない。でも今回のスキャンダルはもっと深刻だ。ある種の全国的嫌悪感を引き起こしている。いつもなら概して保守党の政策に賛同する人々も、反感を募らせ、他党に投票してノーを突き付けたくなるだろう。12月16日には、通常なら保守党の牙城で「手堅い」はずだった選挙区で補欠選挙が行われ、保守党が野党・自由民主党に議席を奪われた。有権者が「抗議票」を投じるには絶好の機会だった。多くの保守党支持者は、自分たちの選挙区から今後2~3年間の議席を保有する保守党議員が誕生することを見届けるよりも、政府に警告の言葉を投げつけてやりたいと思っていることだろう。

ジョンソンが再起不能なほどダメージを受けたかどうかは分からないが、信頼性は失われた。人々は彼の人格をより疑いの目で見がちになっている。「華やか」とか「エキセントリック」というよりむしろ「不誠実」「傲慢」と見るようになるのだ。

新たなブースター接種計画は非常に野心的なものだ。年内に接種可能な全ての人に3度目接種を提供するためには、現在の1日当たり約45万回のレベルを上回る、1日平均百万回の接種が必要になるだろう。成功すれば、大きな偉業になるはずだ。でもジョンソンはその信頼をほとんど得られそうにない。人々はこのブースター接種計画を遂行する英軍やNHS、ボランティアたちのことは称賛するだろうが。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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