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中国に「無関心で甘い」でいられる時代は終わった
イギリスの世論は長い間、中国に批判的でもなければ中国にあまり注目してもいなかった。結局のところ、中国は僕たちが買う製品を安価に作る国。それに僕たちには既に、弱い者いじめで独裁的な懸念すべき国家がもっと近くにあった(ロシアだ)。人の国で平気で暗殺事件を起こし、人の国の内政に平気で干渉してくるような国だ。
だが、新型コロナウイルスと香港というダブルショックを受けて、世論は変わりつつある。中国は、ヒトからヒトへの感染の可能性を隠したことや、「告発者」たち(自由社会では「精通した専門家」とみなされる)を追い詰めたことに対して責任があるとみられている。移動によってウイルスが他地域や他国に広がることが分かっていた春節の時期に、大勢の中国人民が武漢を出入りして旅行した。ウイルス拡散抑止に失敗したとの非難を拒絶し続ける一方で、その後はコロナ禍の国々にマスクを輸出することで国際社会の責任ある一員を装う中国の狙いは、破綻するだろう。
もしも英政府が2年前に、海外に住む300万人余りに市民権を与える計画を発表していたら、この国は既に人口過密だ、さらなる流入で大混乱が起こる、と激しい非難が巻き起こっていたに違いない。だが今回、海外在住英国民(BNO)のパスポートを持つ香港市民のイギリス居住を認めるとの英政府の表明は、「正しい行動」と歓迎された。旧植民地の自由と自治を支えていた「一国二制度」を中国がほごにするなか、イギリスの人々は傍観しているわけにはいかないと感じたのだ。
ジョンソン英首相は、安易な中国嫌いがイギリスに蔓延する事態は望まないと繰り返してきた。だが、今後の対中関係は、冷戦後のお気楽な思い込み──世界はよりよい所であり、特に気に入らない国家でもあまり関心を払わぬままビジネスはできるしうまく付き合っていける──に基づいて進めることはできないかもしれない。
<2020年8月11日/18日号掲載>
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