コラム

離脱派の勝利で激動するイギリスの今

2016年07月07日(木)15時30分

EUの代弁者パッテン卿

 僕は日本の読者数人から興味深いメールをもらった。1つは特に思慮に富んだもので、そのうちにでもぜひ返答したくなるような質問が書かれていた。ほかに、クリス・パッテン(以前にこのブログで紹介した、ブレグジット国民投票自体を認めようとしない残留派の有名政治家だ)が日本のメディアに登場していたことを教えてくれたメールもあった。彼は、EU離脱を決めた日が、イギリスにとってなんと恐ろしい日であったかと述べていた、と。

 僕はパッテンのその記事を読んだ。そして、以前のブログで紹介した、頭にくるパッテンの記事のときと比べると、離脱派に対して失礼な感じはやや薄まっているように感じた。もしかしたら、以前にブログで書いたときには、僕のほうがパッテンに対してトゲトゲしていたのかもしれない。

【参考記事】英EU離脱をノルウェーはどう見たか「ノルウェーモデルはイギリスには耐えられない」

 でもその後、パッテンがEUからけっこうな額の年金を受け取っていることを知った。しかもその年金は、彼がEU批判を口にしないからこそもらえるものらしい。解雇された社員が時に企業との間で結ぶ「非難禁止条項」みたいなものだ。もちろん僕は、パッテンが自身の年金のためだけに離脱派を罵っていた、などと言うつもりはない。彼はきっと、イギリス政府は国民をかえりみるのではなく、ブリュッセルのEU本部のエリートたちの言いなりになったほうがいいと、心底信じているからこそあんなことを言っていたのだと思う。

 それにしても、そんな条項を結ぶとは、EUはなんと被害妄想で支配したがりの組織だろうか。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国が日本にミサイルを配備すれば対応する=ロシア外

ビジネス

米新規失業保険申請は2000件減の21.3万件、減

ワールド

イスラエル、レバノン北部のシリア国境を初空爆 輸送

ワールド

停戦合意発効、おおむね順守 レバノン南部に避難者戻
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウクライナ無人機攻撃の標的に 「巨大な炎」が撮影される
  • 4
    「健康食材」サーモンがさほど健康的ではない可能性.…
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 7
    「健康寿命」を2歳伸ばす...日本生命が7万人の全役員…
  • 8
    トランプ関税より怖い中国の過剰生産問題
  • 9
    トランプは簡単には関税を引き上げられない...世界恐…
  • 10
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 7
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 10
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story