コラム

「イスラム国」が強大化するモザンビーク、見て見ぬふりをする日仏エネルギー企業の罪

2021年04月21日(水)18時30分

この危機はモザンビーク一国では対処不可能であり、南部アフリカ開発共同体(SADC)やアフリカ連合(AU)が介入すべきだという意見もある。しかしニュシ大統領はテロとの戦いはモザンビーク人が主導すべきであり、それはプライドなどではなく主権の問題だと強調した。

20年12月に三井物産のホームページに掲載された記事には、同プロジェクトはエネルギー需要を満たしつつサステナブルな社会を実現させるための答えの1つであり、「ここから世界中の国々の、そしてホスト国モザンビークの、豊かな明日が生まれていきます」と書かれている。しかし世界の紛争データを分析するNGOのACLEDは、今年紛争が悪化すると予想される10カ所の1つにモザンビーク北部を選んでいる。

実在する危機を軽視・矮小化するのは誤りだ。甘い夢、明るい未来を語るにはあまりに厳しい、過酷な現実がそこにある。

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プロフィール

飯山 陽

(いいやま・あかり)イスラム思想研究者。麗澤大学客員教授。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。博士(東京大学)。主著に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『中東問題再考』(扶桑社BOOKS新書)。

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