コラム

リベラルがキャンペーン下手な理由 貧困な語彙でもトランプが熱狂を作る理由

2019年02月19日(火)17時40分

リベラルのキャンペーンを分析した研究が発表された

ちなみに、先ほどヒラリー・クリントンの標語について言及したが、一般にリベラルは大衆を動員するキャンペーンが下手、というのが相場のようである。その理由について、最近面白い研究が発表された

「リベラルはお説教、保守はコミュニケート:381,609件の政治演説から複雑さとイデオロギーを分析する」と題したこの論文は、リベラルな政治家の演説に比べ、保守的な政治家のそれは語彙や文法がシンプルで易しく、伝わりやすい傾向があるということを、計量的に立証したものだ。

トランプの演説の無意味な繰り返しの多さ、語彙の貧困さは、しばしば小学生並みと揶揄されてきたが(Make America Great Againもある意味稚拙な文章である)、この論文が示唆するのは、むしろそれこそが彼の強みなのではないか、ということだ。トランプのラリー(支持者集会)の熱狂は、テレビ芸人として鍛えたトランプの当意即妙の話術なしには理解できない。

ただ、こうした状況も変化しつつあるようで、まだ今年1月に下院議員になったばかりなのにすでに民主党の若きスターとして注目を集めつつあるAOCことアレクサンドリア・オカシオ=コルテスなど、最近ではコミュニケーション能力に長けた、特に女性の新世代がアメリカの政界に新しい風を吹き込みつつある。残念ながら日本には、男女問わず言葉の力で勝負する政治家があまりいないような気がするが、今後に期待したい。

プロフィール

八田真行

1979年東京生まれ。東京大学経済学部卒、同大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。一般財団法人知的財産研究所特別研究員を経て、現在駿河台大学経済経営学部准教授。専攻は経営組織論、経営情報論。Debian公式開発者、GNUプロジェクトメンバ、一般社団法人インターネットユーザー協会 (MIAU)発起人・幹事会員。Open Knowledge Foundation Japan発起人。共著に『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、『ソフトウェアの匠』(日経BP社)、共訳書に『海賊のジレンマ』(フィルムアート社)がある。

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