コラム

クールジャパン機構失敗の考察......日本のアニメも漫画も、何も知らない「官」の傲慢

2022年12月11日(日)20時27分

政治家やCJ機構の中の人は、自分が全く知らない分野に、一切首を突っ込むべきではない。まして税金を使ってファンドを作り赤字を垂れ流すなど言語道断で、CJ機構など最初から造らなければよかったのである。放っておけばよい。無駄に構わなければ、このような悲劇は起こらなかった。公金の無駄遣いを今後どう総括するというのだろうか。許されざる失敗だが、もう取り返しがつかない。

海外で日本アニメ、漫画、ゲーム等のファンがこれだけ増えた。今後もし、政治家や政府がクールジャパンが~、と旗を振るなら、最低でも海外のファンの質問に対して、基礎的な知識を前提に答えられるだけの素養を絶対に必要とする。

「惣流・アスカ・ラングレー」と「式波・アスカ・ラングレー」の違いがその眼帯の有無を以っても鑑別できないのなら、もうそんな政治家や官僚はクールジャパンを語る資格がないので『白蛇伝』からやり直してほしい。『白蛇伝』を観てもそのアニメ史的意義が分からないのなら、カルチャーについて関与するのをやめ、ひたすら民間の創作活動を邪魔しない方向で放任してほしい。

こんな雑なカルチャーへの認識で「クールジャパン!」「日本スゴイ!」と言うのだからお話にならない。大衆受けを狙って宮崎駿監督が~、スタジオジブリが~、と言うのなら『シュナの旅』と『On Your Mark』は最低限度押さえて置くべきだ。が、そもそも漫画版の『ナウシカ』すら通読していないのである。日本の政治家にもかかわらず、日本のカルチャーについて自身がまるで無知というのは恥ずかしいことだ。

政治家になるのには最低限度のイロハ的な要素があるが、クールジャパンを謳う場合には何故か最低限度の知識も、文化的マナーも必要が無いとされている。カルチャーを一等低く見て、馬鹿にしているからかもしれない。非常におかしいことで異常だ。何も知らないのにカルチャーで儲けようと思うべきではない。そういった官製ファンドなど無用の長物であり、これを教訓に二度と類似組織を作るべきではなく、アニメも漫画もゲームも、政府は放っておいて二度と介入しないでいただきたい。

※当記事はYahoo!ニュース個人からの転載です。

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プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

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