コラム

【独自インタビュー】宇宙飛行士の2人に聞いた、訓練秘話とコミュニケーションの極意(米田あゆさん・諏訪理さん)

2024年11月11日(月)17時35分

──たしか、立ち泳ぎの訓練のときに、おふたりでロシア語を話しながら頑張ったんですよね。

諏訪 よくご存じですね。

──半年くらい前の記者会見で、私が「訓練中に2人で助け合ったエピソード」を質問したら、諏訪さんが「立ち泳ぎの時、『喋っていたほうが気が紛れるし、語学の練習にもなるから』と提案して2人でロシア語を話し続けたら、あっという間に終わった」と教えてくださったんですよ。

諏訪 ああ、私が言っていましたか。

米田・諏訪 (顔を見合わせて大笑いする)

──ロシア語のエピソードは、とても印象に残っています。諏訪さんは今の質問についてはいかがですか。

諏訪 スティーブ・ジョブズは、カリグラフィーと(マッキントッシュの)フォントを結びつけたという、ドラマチックな話があったと思います。私は、ドラマチックではないのですが、科学の基礎訓練で科学者や技術者の方と話す中で「自分が大学院で研究をしてきた経験が役に立っているな」と思ったことがありました。

それは内容というよりも「どういうプロセスを経るか」、例えば「研究方向をデザインして実験をしてまとめていく」という彼らの考え方の作法みたいなものを理解するのに、非常に手助けになったという感触を持ちました。

それから、前職(世界銀行)では日常茶飯事にやっているルーティンがありました。例えば、会議を設定して色々な人と話し合って何か結論を出して先に進める。出張に行くと、その国の官庁に訪問して、何かしら技術的なディスカッションをする。そんな中で、自分の専門とはちょっと違う分野の技術的な会話をすることも結構あって、その経験も基礎訓練に役に立ったなと思います。

というのも、(宇宙飛行士の訓練で)自分の専門ではないことばかりを教わる中で、どんな質問をして、どういうふうに議論を深めていくのかと考えたときに、やっぱり前職のそういった経験が活かされているのかなって、脳裏をよぎりました。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト/博士(理学)・獣医師。東京生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第 24 回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)など。

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