コラム

【独自インタビュー】宇宙飛行士の2人に聞いた、訓練秘話とコミュニケーションの極意(米田あゆさん・諏訪理さん)

2024年11月11日(月)17時35分

米田 すみません、今、思い出したのですが、パラボリックフライト(※放物線飛行:航空機を使って擬似的な無重力[厳密には微小重力]状態を作る)で無重力の中で回転するときも、すごく(シンクロナイズドスイミングをしていた)当時の感覚が呼び起こされました。

──ということは、米田さん、無重力では無敵なんじゃないですか。

米田 そうですかね、って、(宇宙に)行ってみないとまだ分からないですが。もう一つ、例を出せたなと思って。

──付け加えていただいてありがとうございます。

諏訪 パラボリックフライトは何人かでやったのですが、米田さんの身のこなしみたいなのは、すごい上手でしたね。そういう秘密があったんだって、今、知りました。

──諏訪さんは、無重力での自分の感覚はいかがでしたか。記者会見のとき、一番印象に残った訓練としてパラボリックフライトを挙げていらっしゃいましたが。

諏訪 いやあ、何となくかっこよく動いているつもりだったんですけれど、後でビデオ見たら、なんかビクビクしている人が何かをしているなって感じだったので、やっぱりまだまだ慣れる必要があるのかなっていう気がしましたね。

newsweekjp_20241111054157.jpg

インタビューも和気藹々とした雰囲気に 筆者撮影

──次に「地学」について、おふたりにそれぞれ伺います。まず、諏訪さんは地球科学、特に地質学や気象科学がご専門です。これまでの宇宙飛行士の活躍は、どちらかというと材料系や生物・医療系に偏っていたように思うのですが、地球科学分野に貢献する宇宙飛行士の未来像をどのように描かれていますか。

諏訪 2つあると思っています。まず、宇宙探査の時代になって、宇宙に実際に行って何かをする時、地球科学、惑星科学はこれからフォーカスすべき分野の1つになっていきます。地球上の研究者と話し合いながら、彼らの目となり手となる、つまりサンプルを持って帰ってきたり、その場で解析したりということが行われていくと思います。そのとき、地球科学のバックグラウンドを持った人には、一定水準の役割があると思います。

そして今後、宇宙開発をますます地球規模課題の解決に結びつけていかなければいけないというところもあると思うんです。

大きな地球規模課題、例えば防災や気候変動対策は、自然科学だけで解けるものではなく、社会科学的な知見なども全部統合的に考えながらソリューションを考えていかなければいけないのですけれども、その中で地球科学の各々の知識はやっぱり非常に役に立ちます。

地球と宇宙という2つのファクターを、地球上の問題解決にどう活かしていけるのか考えていくところに、地球科学をバックグラウンドに持った宇宙飛行士が果たすべき役割があるのかなと思っています。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト/博士(理学)・獣医師。東京生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第 24 回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ルペン氏に有罪判決、被選挙権停止で次期大統領選出馬

ビジネス

中国人民銀、アウトライトリバースレポで3月に800

ビジネス

独2月小売売上は予想超えも輸入価格が大幅上昇、消費

ビジネス

日産とルノー、株式の持ち合い義務10%に引き下げ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 5
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story