コラム

【独自インタビュー】宇宙飛行士の2人に聞いた、訓練秘話とコミュニケーションの極意(米田あゆさん・諏訪理さん)

2024年11月11日(月)17時35分

──米田さんに伺います。JAXAは月・火星探査時代を見据えて、今回の基礎訓練から地学を充実させました。医学がバックグラウンドの米田さんにとって、地質学巡検(※野外での実地調査)などはおそらく初めての経験だったと思うのですが、自分だからこそ地学をこういう新鮮な観点で見られたということがあったら教えてください。

米田 巡検はすごく新しい経験で、いろいろと発見がありました。色々な石や岩があって、1つの石にそんなにたくさんの知見があるんだな、その知見からさらにストーリーが広がっていくんだな、というようなことを学ぶことができました。

また、地学の知識を教えてもらうことで、その知識を持った状態で探すとこれまでとは違ったところに目線がいったり、新しい感覚でこれはどうなんだろうとアンテナを張ったりすることができました。「学んで、かつアンテナを伸ばす」っていうことが巡検では大事なんだなっていうふうに思いましたね。

──最後の質問です。JAXA職員の方々に「おふたりのどこが一番すごいですか」と尋ねると、「優秀で飲み込みが早いのは当然として、一番素晴らしいのは高いコミュニケーション能力だ」と皆さんおっしゃいます。なので、「人とコミュニケーションをとる上で、意識していることは何か」を伺いたいです。また、最近は特に若者で「コミュニケーションって、ちょっと難しいな」とか「人と接するのは面倒くさいな」と感じる方が多いと聞きます。そういう方たち向けに、アドバイスやコミュニケーションのコツみたいなものがあったら教えていただきたいです。

米田 私は色々な人の話を聞くこと、自分が知らない考えを持っている人の話を聞くことが好きなんです。なので、コミュニケーションを取らなきゃというよりは、知らない考えを聞きたいな、というふうに思っています。

コミュニケーションを取るのが難しいなって思う方は、いらっしゃると思います。それに、そういった瞬間は、誰しもあると思うんですね。ですが、自分の中で「とてもいいな」と思える瞬間に、ネットでの情報以外のリアルな反応の声を実際に聞くと、ほっこりしたりすると思うんです。

それに、笑顔でこうね、お互いに向き合って話すからこそ、自分も感情を出せたり、自分の思いも聞いてもらえたりする側面があると思うので、そういうところを大事にしていってほしいなと思います。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story