コラム

「IoTに八百万の神を」内向的な電通女性クリエイターがデバイスに込める日本の心

2015年07月31日(金)12時54分

「necomimiは、電通の内向的な女性社員のアイデアなんですよ」。加賀谷さんがプロジェクトチームのメンバーの1人、なかのさんの話をしてくれた。よく知らない人には自分自身をうまく言葉で表現できない。冷静そうに見えて、実は心の中では楽しかったり、一生懸命だったりする。それでは生きていく上で不便なので、自分の代わりに自分の心の中を表現してくれる器官がほしい。そういう思いから生まれた製品だったのだという。加賀谷さんが脳波の可能性に長年注目していたことや、脳波センサースタートアップとの縁もあり、集中やリラックスを耳で表現する脳波連動型のnecomimiの開発が始まった。

 脳波をアプリなどに利用しようという試みは以前からあった。ただ男性技術者の発想はどうしても、モノをコントロールする、という方向に向きがちだ。necomimiはコントロールではなく"ダダ漏れ=ステイタスの可視化"から起こるコミュニケーションを目指した。この発想のユニークさがあって、世界的にヒットしたのだと思う。

さびしがる掃除機、喜ぶジューサー

 その加賀谷さん、なかのさんたちのチームが今、手がけているのが、mononome(モノノメhttp://neurowear.com/projects_detail/mononome.html )という製品のプロトタイプだ。モノに「目」をつける。それだけのものだ。先行事例もいくつかある。ただこの「目」には振動などを計測する複数のセンサーがついていて、人と関わったことを察知する。

mononome(モノノメ)



「いっぱい触れあうとモノが喜んだり、関わらないと悲しんだりするんです」となかのさんは言う。「モノのキモチは人との関わる時間や頻度に拠るのではないかという人間本位の仮説ですが」。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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