対米戦争も市場経済も大金星──そんなベトナムを金正恩は目指す
経済視察に熱心な金正恩はベトナムで祖父・金日成の足跡をたどるかも KCNA-REUTERS
<米朝「因縁」の国ベトナムでの首脳会談開催はトランプのメッセージ? 中国の覇権主義とも戦った小国の覚悟に北朝鮮は倣えるか>
トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)党委員長は2月27~28日に、ベトナムの首都ハノイで2度目の首脳会談を開催する。
昨年6月のシンガポール会談は華やかなイベントにすぎず、「取りあえず世界から脚光を浴びよう」と両首脳とも思っただろうが、今回は違うはずだ。米朝両国にとって、ベトナムは特別な国だ。この因縁の地で長い対立に終止符を打ち、一歩前へ踏み出そうとしているのではないだろうか。
かつてベトナムは泥沼の戦争に耐えて、アメリカを敗走させた。ベトナム戦争終結から20年余り後の95年に国交正常化を実現。その間、ベトナムは86年からドイモイ(刷新)政策を進めて経済発展を遂げ、国際的な孤立状態から脱出していた。アメリカからすれば、ベトナムは対立から和解へと移行できた建設的なパートナーといえる。
一方、朝鮮戦争で戦った北朝鮮とは53年に休戦協定を結んだ後も国交樹立には程遠く、朝鮮半島は「冷戦最後の地」と言われる。国民を飢餓に追い込みながら軍事優先で核ミサイル開発に突き進んできた北朝鮮の歴代指導者も経済発展の重要性は認識していただろうが、本格的な改革開放に踏み切れないでいた。実際、金が中国を訪問するたびに先端科学技術を誇る同国の工場や研究所を見学するのは、
「自国を豊かにしたい」という気持ちの表れだろう。問題はどこを経済発展のモデルとするかだ。「ベトナムに見習え」と、トランプは金に言い聞かせるかもしれない。もはや行き詰まりを見せつつある中国流社会主義市場経済の「成功物語」よりも、対米関係において同じような歴史問題を見事に解決してきたベトナムのほうが身近な模範になりそうだ。
金にとっても、ベトナムは親しみを覚える相手だ。昨年12月3日、在ハノイ北朝鮮大使館は、「建国の父」金日成(キム・イルソン)国家主席のベトナム訪問60周年を記念する行事を開催して、両国の厚情を温めた。
中国の内政干渉に抵抗
容姿から歩き方まで祖父そっくりの正恩にとって、ベトナム訪問を実現すれば対内的に二重の宣伝になる。祖父の「偉大な足跡」をたどっていることと、祖父でさえ解決できなかった「米帝との戦後処理」を清算した、と誇示できるからだ。
ベトナムと北朝鮮の対米関係を考える場合、陰の存在となってきた大国、中国を忘れてはいけない。
中国は「抗米援朝/援越」という歴史ドラマの主人公だった。朝鮮戦争では50年から最終的に撤退する58年まで、中国は約135万人以上の「志願軍(義勇軍)」を投入した。犠牲者の中には最高指導者・毛沢東の息子も含まれている。中国と文字どおり「鮮血で固められた友情」を構築したことで、北朝鮮は国家の命脈を保てた。
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