コラム

日本学術会議問題を「総合的俯瞰的に」考察して浮かび上がった、菅総理の驕り

2020年12月03日(木)21時26分

強大化する隣国中国と欧米の「普通の国」と連携して対峙していくために、日本も「普通の国」としての法整備を急いだのだと思う。

ここでは、日本は「普通の国」になるべきか「特別の国」であるべきか、や、集団的自衛権が違憲かどうかについては論点でないので、深入りせず対立軸として提示するに留める。

III. 枠組化

これらの2種類のキーワードを組み合わせてマトリックスにして俯瞰して考えてみる。

gakujutsu1.png

日本において現実の政権運営を担う与党の保守系議員は現実主義者であり、現実的な軍事的脅威に敏感で、それらの脅威に対して「普通の国」として対応したいと動く(A①)。それに対して学者(文系中心で理系はあまり関係ないという指摘もありうるが)の多くは、湯川秀樹教授以来、理想主義的に平和国家日本を語る事が多い(B②)。もちろん学問の自由なので、B①にも学者は存在する。また、弁護士等の野党議員は、実行力がないと批判されながらも「特別の国」としての日本を守るべく護憲活動に熱心だ(A②)。

IV. 具体化

最後に、個別名を入れてみて、構造化してみた枠組みを検証してみる。

gakujutsu2.png

A①は安倍政権保守本流の政治家達であり、その後継者としての菅総理がB②の6名の教授の任命を拒否したことから事が対立が始まっている。「普通の国」を目指す保守「政治家」達と「特別な国」を志向する一部の「学者」達の対立だ。(対立軸 I.)

また当然、野党は菅政権批判の最初で最大の攻め口と怪気炎を上げている。また、自民党議員の中にも非主流派においては健全な批判もある。(対立軸 II.) 

「イエス」だけで固めるなら学術会議の価値がなくなる

かつて学術会議の長老とも喧嘩し、自民党の憲法改正論議もリードしてきた大物学者小林節氏が、今回のケースでは憲法23条の学問の自由を侵害する「任命拒否は許せない」と菅総理を激しく糾弾しているのも興味深い。 (対立軸 III.)

#排除する政治~学術会議問題を考える:学術会議は問題あるが...それでも小林節氏が首相を糾弾する理由

一方で、こちらも大物学者の村上陽一郎氏などは、問題が顕在化した直後に、「学問の自由」の侵害よりも、「日本学術会議」の特殊性が問題だと指摘している。(対立軸 IV.) (但し、村上陽一郎氏はその後沈黙)

学術会議問題は「学問の自由」が論点であるべきなのか?

プロフィール

安川新一郎

投資家、Great Journey LLC代表、Well-Being for PlanetEarth財団理事。日米マッキンゼー、ソフトバンク社長室長/執行役員、東京都顧問、大阪府市特別参与、内閣官房CIO補佐官 @yasukaw
noteで<安川新一郎 (コンテクスター「構造と文脈で世界はシンプルに理解できる」)>を連載中

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story