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【学術会議問題】海外の名門科学アカデミーはなぜ名門といえるのか
12月4日の記者会見で、日本学術会議の任命拒否問題は「かなりの反発を招く」ことは予想していた、と語った菅首相 Hiro Komae/ REUTERS
<歴史ある欧州のアカデミーは、民間で独立しながら積極的に政治の要請にも答えているので政府も補助金を弾む。日本とは逆だ>
前回12/3(木)のコラムで、日本学術会議の本質的な問題の構造を分析してみた。今回はこの構造理解を踏まえて、どのような文脈で発生したのか、因果関係、それぞれの立場の「意味の場」、その底流に流れる「当事者の古層」等を踏まえて更に、本質に迫りたい。
I. 政府と学術会議の関係性の整理による検証
日本学術会議は、我が国の科学者の内外に対する代表機関で、内閣府の「特別の機関」にあたる。
そもそも日本学術会議法によると1949年に「科学が文化国家の基礎であるという確信」のもとに、「わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献」、「世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命」として設立されたものだ。
但し、設置法の条文をみても政府との関係性が極めてあいまい。かつ、行政府の下の特別機関であり、海外のアカデミーのような立法府との接点はない。
10月上旬の報道番組でも、政治評論家の橋下徹氏と任命拒否された松宮孝明教授がやりあっていたが、松宮教授が設置法3条の
第三条 日本学術会議は、独立して左の職務を行う。
一 科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること。
二 科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること。
を主張するのに対して、橋下氏は第4条
第四条 政府は、左の事項について、日本学術会議に諮問することができる。
をもってして、政府の諮問会議で<?>特別公務員であったとしても国民の付託を受けた政治家の行政裁量の範囲として、特定団体に偏った会員構成の変更修正する任命権を持ちうると反論していた。(但し、橋下氏もそれでも任命判断に対する説明責任は首相にあるとはしていた。)
第五条 日本学術会議は、左の事項について、政府に勧告することができる。
それぞれ、諮問することができ、かつ勧告することもできるが、双方に義務はない。極めて曖昧な位置づけに、国を代表する研究者のアカデミーが置かれていることになる。
事実、正式な政府からの諮問に対する勧告と呼べる答申は、2007.5.30の「地球規模の自然災害の増大に対する安全・安心社会の構築」に関する答申以来、10年以上ない。
政府の問いかけ以外の関係機関の審議依頼と回答も年に一度程度の発信。
「科学的エビデンスに基づく「スポーツの価値」の普及の在り方」(2020)、「人口縮小社会における野生動物管理のあり方」(2019)も大事だが、年に一度この程度テーマでの回答が、日本を代表するアカデミーの政府機関としての成果だとすると心細い。国民の多くがその存在すら知らないはずだ。
当初は、「学問の自由」を人事権をもって不用意に侵害してしまった菅内閣による論点外しだと、私自身思っていた。ただ、実際に、日本学術会議のホームページに掲載されている成果を論文含めて読んでみると、国を代表する科学アカデミーのあり方がこれで良いのか、しっかりとした議論が必要である様に感じた。
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