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大統領選挙に見るフランス政治のパラダイムシフト
「右でも左でもない」というスタンスで躍進するマクロン前経済相 Patrick Kovarik-REUTERS
<中道系独立候補のマクロン前経済相の躍進はフランス政治に構造変化が起きていることを示している。伝統的な左右対立の構図の枠を超える動きで、これまでの常識では理解しがたい。これは一体どういうことなのか、またなぜそうなってしまったのか?>
最近のフランス政治に関しては、4月23日(第1回投票)に迫った大統領選挙を前に、国民戦線のルペン候補の帰趨に関心が集まりがちだが、実はその陰に隠れて、フランス政治のパラダイムシフトとも言うべき構造変化が起きていることが見逃されている。それは、ルペンの躍進のほか、左右両派の既成政党の不振と、その枠外で颯爽と登場してきた新星、マクロン候補の躍進に端的に示されている。
マクロンは、高級官僚、銀行幹部を経て、オランド社会党政権の下で、大統領補佐官、経済大臣を務めた。その職を辞して、「右でも左でもない」という立場から、政治運動「さあ前進!」を立ち上げ、2016年11月の出馬表明以来、中道左派、中道派、無党派層からの支持を集め、急速に台頭してきた。
今や、どの世論調査でもルペン候補と1〜2位を争う勢いを示しており、仮にこの二人で第2回の決選投票になった場合、マクロンがルペンを破って大統領に選出されるというシナリオが、現実味を増している。そうなると、フランス第5共和政史上、最も若い39歳の大統領誕生ということになる。
片や既成政党の側はどうか。共和派のフィヨン候補は、夫人の議員秘書架空雇用疑惑問題の処理をめぐる党内の結束の乱れ、支持者の離反により、支持率の低下に悩む。社会党のアモン候補は、党内左派をまとめるのに精一杯で、伝統的社会党支持層や党内右派有力者のマクロンへの鞍替えを止められない。社会党は瓦解の危機すら囁かれるに至っている。この主要2大政党の候補は、それぞれの党の予備選挙を勝ち抜き、正式な候補でありながら、いずれも勝ち目なし、というのがすべての世論調査の示すところだ。
こうした既成政党の凋落ぶりは、マクロンのせいだけではない。急進左派のメランション候補は、かつての左派戦線を母体とした「不服従のフランス」を立ち上げ、社会党に飽き足らない左派支持層の支持を受けて、社会党のアモン候補を上回る勢いを示す。ルペン候補は、社会党と共和派を十把一絡げに体制政党と決めつけ、敵視することによって、反エリート感情をもつ有権者の支持を集め、伝統的左派支持層にも食い込んで党勢を拡大している。また、ソフト化によりウィングを広げ、もはや単なる「極右」政党ではないことは前回のコラムで紹介したとおりだ。
【参考記事】フランスに「極右」の大統領が誕生する日
これらは、伝統的な左右対立の構図の枠を超える動きで、これまでの常識では理解しがたい。これは一体どういうことなのか、またなぜそうなってしまったのか?
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