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最新ポートランド• オレゴン通信──現地が語るSDGsと多様性

山本彌生|アメリカ

若いZ世代が切り開く『子供の貧困とエンパシー』ポートランド編

| 自分を育てること。そして次の世代のロールモデルになること

Z世代は、仕事よりもプライベートを重視。自分という個を尊重する傾向にあります。また、生まれた時からシビアな社会・家庭状況を体感している数が多いのも特徴です。そんなことから、他のジェネレーションよりも社会問題への興味や関心が深いといわれます。

そんなZ世代ど真ん中のアマンダさん。シンパシー(相手をかわいそうと思う気持ち、同情・思いやり)を超えて、エンパシ―(相手のことを自分の事のように思いやる気持ちと感情)を高く持ち得ている理由を聞いてみました。

「実は、私の母は低所得の家庭出身でした。そんな環境から脱皮するために、必死に働きながら大学に通ったんです。女性が自立して生活ができること。そこを目指して、医療技師の免許を取得したという経緯があります。

母はたくさんの事を教えてくれました。多くの人から受けてきた愛。それを社会に還する大切さ。周囲の人々への思いやり。困っている人を助けることの必要性。そんな環境から、私自身も、多くのボランティア活動を進んでするようになったのです。

教育の大切さ、必要性。このことを肌で感じていたこともあって、大学では教育学を選択しました。実は、その在学中のインターンシップで、今の自分の基礎が作られたある出来事が。

それは、極度の虐待やネグレクトを受けてきた子供達との合宿中のこと。感情面や行動面で深刻な悩みを抱えている子供達。小さい身体で、大きなトラウマに苦しめられている姿や経験談をいくつもいくつも、何日にも渡って聞き続けました。想像を絶する経験に、私自身の胸も張り裂けそうになって。それを機に、この分野で貢献をしたいという気持ちが固まっていったのです。」

そこから、ものごとや行動の背景を想像するように意識をし始めたアマンダさん。自然と、でも必然的にエンパシ―を持つマインドへと成長していった。そう回想してくれました。

今の20代は、現在の新しい価値観と働き方を持ち合わせ、同時に模索している最中だと話します。ですから、それぞれが各分野のロールモデルになっていくことが必要だと。加えて、次の世代のロールモデルになるためにも、小さな範囲でも「ここを変えたい」と声に出す、意識することが求められていると言います。

「私自身、ここを変えたいと思うところ。それは、働きすぎて燃え尽きてしまう可能性を少しでも取り除きたいのです。実際、私を含めて多くの人が『コロナ疲れ』を経験中です。特に社会に出たばかりの若い人の疲弊ぶりは酷いです。多くの友人は、失業や失業への不安、病気・感染、社会的な孤立などの脅威に常にさらされていると感じて、疲れ果てています。

この状況下で、自分の身体のセルフケアをすることは不可欠な行為です。ですから、常に意識をして、仕事とプライベートの境界線を明確に引くように努めています。時代の差かもしれませんが、私たち若い層は、自分の身体を壊してまで働く。そういう感覚に対して恐れを持っています。とはいえ、知らず知らずのうちに、自分の身体から目をそらして、自分の内なる声を無視して働き続ける自分もいます。健康を害したら、働くこともできないのに。」

今は、過去の歴史から見ても珍しく3世代が一緒に働く時代です。その中で、Z世代が新しいロールモデルを作り上げながらニュー・ノーマル時代をけん引していくことが、この社会には必要なところ。頑なにならず柔軟に、3世代が一緒に成長していくことができれば、こんなに素敵なことはありません。

ですから、まずは多くの人に『知ることの大切さ』を伝えたい。そして、想像をもって接していってほしい。アマンダさんは、そう締めくくってくれました。

遠くの大きい出来事に、目を留めることは大切です。そしてそれ以上に、困窮している人だけではなく、自分の身近で必要があるという人に目を配る、言葉をかけることも大切です。

人は食事をすれば、生きていくことはできます。けれども、愛情という栄養がなければ、心も身体も育っていきません。子供も、そして大人も一対一の温かい関係が特に必要な時期ですよね。

個々の置かれている状況だけではなく、『相手の事情や心情に思いを寄せる』。すなわちエンパシーを持つことから、なにかの道筋が見えてくるかもしれません。

あなたにとって、今、小さくても温かい言葉をかけてみたい人は誰ですか。

Amanda Cat.png猫大好き! Photo | Amanda Ivie

次回のテーマは、ポートランドスタイルという分野で『ロールモデル』になった人のケースを紹介します。新しい分野を切り開いて、このニュー・ノーマルをスムーズに移行するための知恵とは。415日掲載です!
記:各回にご登場いただいた方や記載団体に関するお問い合わせは、直接山本迄ご連絡頂ければ幸いです。本記事掲載にあたってのゲストとの合意上、直接のご連絡はお控えください。
 

Profile

著者プロフィール
山本彌生

企画プロジェクト&視察コーディネーション会社PDX COORDINATOR代表。東京都出身。米国留学後、外資系証券会社等を経てNYと東京にNPOを設立。2002年に当社起業。メディア・ビジネス・行政・学術・通訳の5分野を循環させる「独自のビジネスモデル」を構築。ビジネスを超えた "持続可能な" 関係作りに重きを置いている。日系メディア上のポートランド撮影は当社制作が多く、また業務提携先は多岐にわたる。

Facebook:Yayoi O. Yamamoto

Instagram:PDX_Coordinator

協働著作『プレイス・ブランディング』(有斐閣)

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