イタリア事情斜め読み
イタリアでコロナ禍に救急車を呼んだら
39℃の高熱が出て、完全にダウンした。
原因は、明らかだ。
急激に寒くなり初雪が降り出した日の夜に、熱がどんどん上がり出した。
原因は、コロナウイルスに感染したのではなく、毎日の寝不足と過労だと後に判明する事となる。
1日ぐっすり寝て、次の朝起きたら熱はすっかり下がっていて、今日も何事もなかったかのように元気で快服した。
あれはなんだったのだろうかと思うほど、熱が出た。何度測っても38,5℃のK点越えをしてくる。
| イタリアでは救急車を要請するときは118番
夫が勝手に呼んだらしく、私の携帯に118から電話が折り返し呼び出しがあっていたようだが、1度も着信音は鳴らなかった。
なぜなら、非通知設定で118が私に電話してきているので、なぜか私の携帯は非通知の着信を受け付けない。
この問題を今後の緊急時に備えて、どうにかしなければいけないというのが反省点である。
まずは、118に名前と住所、症状を質問された。その後に、年齢を問われた。
先ほどから高熱が出始めた、ただ熱がある、という症状を伝えた。
救急電話のオペレーター女性:コロナウイルスが疑われますが、コロナウイルスの感染症例に似た症状が高熱の他にも何かないですか?
私:これといってコロナウイルスの症状のようなものはありません、ただ高熱が出ています。
救急電話のオペレーター:まずは、バーゼメーディコ(ホームドクター)に診てもらい、指示をもらうようにしてください。
私:その私のバーゼメーディコなんですが、定年退職をして引退をされたので、新しい女医さんに担当医が変わり、既にその人もまた変更になったと手紙を受け取ったばかりで、変わるのは3回目です。現在、どの医者が私のバーゼメーディコ(ホームドクター)なのか分からない状態なんです。
救急電話のオペレーター:そんなこと、私は知らないわ、あなたをお助けできません、救急車を要請したのはあなたの夫ですから電話口に出してくれる?
私:夫は今、急性坐骨神経痛で一歩も歩けないので電話口に出られません。夫は別宅にいます。
救急電話のオペレーター:とにかくホームドクターと連絡をとって診てもらってください。救急車は要るんですか、要らないんですか、はっきりしてください。
私:必要ありません。
救急電話のオペレーター:さよなら。 ガチャ!(見事なガチャ切り)
こんな数字見たことない。118(救急)に電話したら、高熱以外の何かコロナウイルスの症状が他にあるかと聞かれた。疑わしいけどこの調子で今後も3日以上熱が続いたら、PCR検査を受けさせると・・・今の状態だと連れて行くには行くけど、病院に何もせず何時間も待つことになりますとの説明 pic.twitter.com/KoHWQlRxGF
-- ヴィズマーラ恵子イタリア在住 (@vismoglie) December 5, 2020
仕方ない。私が必要としていると勝手に思い込んだ別宅にいる腰の抜けた夫が勝手に118要請をしたので、緊急オペレーターの方と本当に救急車を必要としている方々には、申し訳ないと思った。
こういった時は、タキピリーナというイタリアでは一般的な解熱・鎮痛薬. 有効成分がパラセタモール系の錠剤を服用する。
1000と500というのがあって、強い利き目あるタキピリーナ1000を服用して様子をみた。
しかし、熱は一向に下がらない。
搬送先は、コロナウイルス患者受け入れ先の総合病院で医療崩壊中のサンジェラルド病院なので、数時間何もされず、寒い中に放置されコロナウイルスをもらうリスクの方が高い。
病院の帰りは、夜中に走っているタクシーなどないし、私を迎えにきてくれる人など誰もいない、夜間外出禁止令があるので22時を過ぎると誰も外出してはいけない。友人が迎えに来るにしても臨時外出の理由には該当しないので、最悪の場合は見つかれば400€(約5万円)の罰金をとられる。その場合は私が払うとしても400ユーロは痛い出費だ。病院から家まで到底徒歩で帰れる距離ではない。外は雪も降っている。
医者の受診後、緊急性がなかった症例だという診断と判断が下された場合は、自己負担が35€ほどかかって後に請求される。
総合的に判断した結果・・・
自力で家に帰ることは不可能だと瞬時に判断できたので、やはり救急車を断ってよかったのだ。
ふと、童謡「通りゃんせ」の一節が脳裏によぎる。
"行きは良い良い帰りは怖い"
翌日、私のホームドクターが誰になったのかが判明した。手紙がきた。
まだ見ぬ新人ドクターに電話をしたら、これが出ない。何度電話してもコールが鳴っているだけで応答はしないし、留守電にもならない。とにかく繋がらなくて連絡のとりようがない。
本当にホームメディコが必要な時は、このように繋がらないのだと今回初めてわかったし、実践と経験がつめた。
私の高熱の原因と因果関係は
| Il colpo della strega「魔女の一撃」
イタリアではぎっくり腰のことを魔女の一撃と呼ぶ。
まるで魔女の呪文の犠牲者であるかのように、警告なしに突然発生するため、そう呼ばれるようになったと。
夫がぎっくり腰になってしまい一歩も歩けない、どうしようもないと、夫を連れて帰ってきてくれた同僚が私に電話をしてきた。
かなりの激痛があるらしく泣き叫ぶ感じで辛そうなので、救急車を呼んだらしい。
奥さんが到着するまで、救急車も発車できないし、サインがいるとのことで、慌てて帰ることなった。
救急要請に10分後には、救急隊員が駆けつけたが、搬送先病院は、コロナ最前線で医療崩壊寸前のサンジェラルド病院の予定だという。
空いているベットなんてもうない。
コロナウイルスの症状はなく、ぎっくり腰で動けない、激しい痛みがあるので救急車を要請したが、今病院に行くのはリスクしかない、病院に到着しても数時間何もされずただただ待つだけになる、ならば、家でこのまま動かず安静に治療した方が賢明だと救急隊員が言う。
このご時世だ、コロナウイルス患者を受けて入れている病院の現状も容易に想像できる。
救急隊員の勧め通りに、そのまま家で様子を見ることになった。
2、3日経っても激痛が治らず、徐々に激しくなっていると夫はさらに呻き(うめき)声を上げて、何度も呼びつける。
夜も眠れない。こっちも眠れない。睡眠時間は2時間。これが毎晩続いた。
バーゼメーディコというホームドクターに何度電話をしても、電話に応答がない。
このコロナ禍でホームドクターが自宅に訪問し診察に来ることもできないとのこと。
痺れを切らした義父が義父のお世話になっている専門医に電話をした。
ドクターは診察なしに口頭で、薬の名前を言うだけ。電話口で告げられたその薬の名前をメモって、それを薬局の薬剤師に伝え薬をもらうという簡略化された方法である。
とりあえずどんな薬を服用させればいいのかだけ情報を入手することができた。
医者には、ブルフェンという薬やSoldesamという薬やMuscorilという筋弛緩剤を買ってくるように言われた。
夫の看病とペットの世話で薬局に行けない私の代わりに、夫の友人がメモ紙を持って薬局に薬を買いに行ってくれたのだが、ある薬は大変強く、麻薬なので、医者の電話口での指示ではあるが、医者が書いた処方箋があるわけでもないし、身内でもない赤の他人の友人には薬は渡せないとのことで、友人から電話があった。「恵子、すぐに薬局にサインしに来て。」
私が同意書にサインをする必要があるのだという。結局、私が最初から薬局にいけばよかった。
その場でサインしろと言われ、同意書を隅々まで全部読んだわけではないが、さらっと一通り目を通してさくっとサインをした。
おそらく、「この薬を服用した結果なんらかのアレルギー 反応が出ても、当店は責任を負いません。当店が過失責任を問われることはなく・・・」的な免責および危険引受けの同意書にサインをさせられたのだろうと思う。
どうやら、ムスコリルを服用した後から夫の呻き声と痛みは更に増した。
何をしても痛く、どんなポーズでも痛みが走り、軽減するようなポジションも見つからず、とにかく酷く痛むと言う。
3回目の服用後から、薬の副作用が原因なのか、突然しゃっくりが出始め、それが一日中止まらなくなった。
しゃっくりを止めるコルテゾーネという液体を服用させるようにとまた薬の指示が出た。
これも全く効果はない。
薬を飲ませても夫のしゃっくりは一向に治らない。24時間止まらない。5日間もしゃっくりが止まらない。
しゃっくりの止め方
を検索して、実践させてみた。
「息を深く吸い込む」のと「息をゆっくり吐き出す」をさせても効果無し。
両方の人差し指を両耳に突っ込み耳の奥を押さえ続けても効果無し。
舌を指で引っ張ってもしゃっくりは止まらなかった。
最初は、しゃっくりなんて簡単に止めることができるだろうと思い、完全になめていた。だからこんな迷信も試してみた。
「豆腐の原料は?」という質問もしてみた、イタリア語で「ソイア(大豆)」と答えた夫。でも、直後にしゃっくり。このしゃっくりを舐めるなと激怒された。
コップの逆側から水を飲むことも試したが、しゃっくりは止まらない。変な事ばかりさせやがってと言わんばかりに、怒られた。
次に、突然驚かせてみた。しゃっくりは止まらなかった。それどころかただでさえ神経に触って過敏になっているのに、腹が立ったようで逆鱗。
結局、どのやり方でも日本式ではしゃっくりは止まらなかった。ただ、夫を怒らせただけだった。
イタリア式しゃっくりの止め方では、一般的に言われているのは
レモンを食べる、蜂蜜をゆっくり飲み込む、氷水を一気飲みする、全て実践したが
氷水とレモンは少し効果があり、一時はしゃっくりが止まった。
イタリア人にはイタリア方式しか効かないようだ。
薬剤師にこの薬(ブルフェン)はウナ・ボンバ(爆弾だよ)これ以上に強い薬はない、注射よりもきついよ、サインして!と言われたその薬がしゃっくりの原因だろうと私はみた。
服用を止めるようにしてみたら、しゃっくりは自然に止まった。
次の日、また救急車を呼ぶのは忍びないので、私の運転で救急病院へ連れて行った。
そこはコロナウイルス感染患者を受け入れる救急病院だ。病院の玄関に夫を下ろし、そそくさと帰宅した。
コロナに絶対罹患したくないし、我が家はペットの犬2匹を世話する人が必要なので夫婦共倒れだけにはなってはいけない。私が倒れるとワンコ達の世話をしてくれる人が誰もいないので致命的となる。
夫は、救急病院でレントゲンを撮られただけで、これといった治療はしなかった。
レントゲンの結果、第4・第5腰椎の間の椎間板が完全につぶれていると。
夫が右太腿に痺れと激しい痛みが出ている、その原因は第五腰椎にある椎間板の髄核が神経を圧迫しているので、坐骨神経に触れ痛みが出ていると医者から説明を受けた夫。
夫の話では、しゃっくりの件を医者に相談したが、完全にスルーされたらしい。薬の副作用とは考えられないとのこと。
痛みはどうしてやることもできないのに、8分毎に夫に何度も呼び出され、こっちも眠れない。
次にMRIを撮ってもらう為、また搬送車両と夫を運んでくれる人のサポートがいる。
ここで、Ambulanza Privata(アンブランツァ・プリバータ)という救急車を呼ぶほど緊急ではなく病院へ搬送をしてくれる有料救急車24時間対応に電話をして、夫の搬送をお願いした。
現金払いで病院と家との往復で80€(約1万円)コロナウイルス陽性患者の搬送の場合は360€(約46,000円)
さらなる処方箋が出たので、薬局にそのまま処方箋を渡し、薬剤師から渡されたものに少し戸惑った。
著者プロフィール
- ヴィズマーラ恵子
イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie