イタリア事情斜め読み
イタリアのコロナウイルス第2波と現状
10月14日に7,332件の新しい症例が記録されて以来3日連続の新規感染症例数を更新しているイタリア、コロナウイルス流行後最も最悪なピークを迎えたのが3月21日で、1日の新規感染症例が8,804件であった。10月17日付けで更新されたCovid-19パンデミック速報のデータによると、イタリアの1日の新規陽性者数は約1万人を越した。
イタリアのコロナウイルス10月17日速報では、10,925件の新規症例と47人が死亡。
3月1日付首相令が発出され、通称「ゾーナ・ロッソ(レッドゾーン)」に指定された自治体がまず初めにロックダウンされた。
この時点では、イタリアの感染者数は1,577人だった。
3月5日、新型コロナウイルス感染症対策本部で「水際対策の抜本的強化に向けた新たな措置」が決定し、同時にイタリア全土にこのソーシャルディスタンス1m以上を保つ配慮が求められた。
3月6日、イタリアは中国につぎ、世界で2番目に死者数が多い国となり、コンテ首相により3月9日にイタリア全土のロックダウンを宣言。
この日だけで1797人の感染者が確認され、死者は631人となった。
ロックダウン後も感染者は増え続け、
3月19日には新型コロナウイルスの感染による死者は3405人で、中国を抜き世界最多となってしまった。
イタリアは世界に先立って中国からの旅客機の乗り入れを禁止した国である。
先のG7の中で初めて中国の「一帯一路」に関する覚え書きを締結した国でもある。
中国に依存して景気回復を狙ったこの「一帯一路」構想のツケが、この悲劇を生んだと諸外国に揶揄されたり、
"イタリアだけがなぜこんなに突出して感染が拡大したのか"
その理由をめぐり様々な分析と憶測が飛びかった。
イタリア人は挨拶するときに「キス」や「ハグ(抱擁)」をするからだ、「毎日風呂に入らない」、「家の中で土足生活」だからだ、などとイタリア人の文化風習と公衆衛生に対してを指したものが多かった。
イタリでは、日常の習慣として親しい仲の人で男女問わず挨拶をするときに、互いの左頰と左頰を合わせ、次に右頰と右頰を合わせる仕草で挨拶をする。
時に抱擁(ハグ)も加わる。もちろん握手もする。
3月4日、首相は、全国民へ向け「人との身体的な接触を避け、一般的なハグや握手を控えるよう」求める内容を発表した。
| バーチョ(キス)とアブラッチョ(ハグ)禁止?!
イタリア人にとって、新型コロナウイルスのパンデミックが始まる前と今で何がなくなったかを列挙した場合、
間違いなく、「スキンシップ」抱擁(ハグ)がリストのトップに上がってくる。
コンテと反Covidルールについて、セグリーメサピカ(Br)とのインタビューでイタリアのジュゼッペコンテ首相は、「私はまだ90歳の父親を抱き締めることはできない」と語った。
今でも、イタリアでは人々は肘と肘を合わせる「肘タッチ」の挨拶をしている。ハグをして挨拶をしている人はいない。
| ハグはしてはいけないの?
抱擁が短時間内で行う場合のリスクは低い
スタンフォード大学の心理学教授、ヨハネス・エイクシュタット氏は、「愛情を込めて互いに触れることは、私たちの生物学的システムが安全で、自分は一人じゃないことを互いに認識し、伝える方法です」と述べている。
パンデミック期間中に人をハグする安全な方法について、バージニア工科大学科学者のMarr博士は、香港の研究からの数学モデルに基づいた計算結果を発表した。
無症状感染者、もしくはたまたま咳をした人とハグをしたとしても、短い時間の抱擁での暴露のリスクは驚くほど低いと発表した。
しかし、一人一人が異なる量のウイルスを放出する。
ある特定の患者は「スーパー・スプレッダー」と呼ばれ、ウイルス負荷が非常に高く自分自身で何十人もの人々に感染する可能性がある人も存在することを覚えておかなければならない。
| 安全に抱擁するために何をすべきか
カッシーノ大学およびオーストラリアのブリスベンにあるクイーンズランド工科大学の技術物理学のジョルジョ・ブォナンノ教授は、以下の方法を推奨している。
1、反対方向を向きお互いの呼吸は交差せず頬には接触しない。
2、マスクを必ず着用しておく。
3、既知の人とだけハグをする。不特定多数の人々とランダムにハグをするのは避けた方がよい。
4、咳やその他の症状がある人の場合は、リスクがかなり高くなるためハグは避けた方がよい。
5、屋外でするハグは、屋内に比べて20倍低下するため、できれば屋外にいる時だけ。
6、ハグをする時には相手の体や衣服や顔とマスクには触れない。
7、とにかく短い時間だけハグ。少なくとも数メートルは素早く離れる。
8、ハグをしながら話したり咳をしたりしない。
9、伝染性の可能性のある粒子を放出しないためお互い息を止める。
| 伝染の本当のリスクについて議論が進む
平均的な咳は5000から10,000のウイルス粒子を運ぶ可能性があるが、飛沫のほとんどは地面または近くの表面に付着する。
人々が密接に接触している場合、通常、咳の液体の2%(ウイルス粒子約100-200)が吸入されるか、近くの人に付着するが、空気粒子の1%のみで、実際に伝染する。
推定200から1000の範囲のウイルスが推定されていても、コロナウイルスに感染するのに必要なウイルス量は正確には判明されていない。
リンジー・マー氏は、
「私たちが病気になるのにどれだけの感染性粒子が必要かはわからないが、おそらく、話さず抱擁中に咳をしない限り、リスクは非常に低いはずです。」と結論づけた。
最も安全で確かな事は、ハグ(抱擁)を避け、しないことです。
今日コロナウイルスに感染しているウィルス保持者(回復と死亡を除く)は、イタリアには1万1,700人いる。実際には、4月19日最大ピーク時を超え、陽性の合計は108,257人だった。
病院に入院した人は25,033人、2,635が集中治療で治療している。433人が死亡した。
PCR検査を受けた人は165,837人、その内、陽性だった人は約7%(正確には6.6%)。これは、実行された100人のPCRテストのうち7人が陽性であったことを意味する。昨日はそれが7%であった。
イタリア人の一番心配していることは、クリスマス時期の再ロックダウン。これだけは、避けたいと願っている。再ロックダウンになってしまうのか、それを回避できるのかは、国民一人ひとりの責任ある行動にかかっている。ソーシャルディスタンスを保ち、常にマスクを着用しコロナウイルス感染拡大を防ぐように心がけなければいけない。
10月13日に首相令が公表され、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、マスクを常時携帯し、私的住居以外の閉鎖空間や屋外のあらゆる場所でマスクを着用することを義務付けられた。
・運動中の者
・6歳未満の子供
・マスクの着用に適さない疾患や障害を持つ者。また、右の者の世話・介助を行う上でマスクの着用が不適当な人
は、義務を免除される。
また、首相令で
・アマチュアレベルの接触を伴うスポーツに関する試合や活動は全て禁止。
・屋内外にかかわらず、パーティー(feste)は禁止。市民婚、宗教婚を問わず、結婚式後のパーティーには、関連のプロトコール及びガイドライン遵守のもと、最大30名まで参加可能。私的住居に関し、パーティー開催や同居人でない人々を6名以上招待することを避けることを強く推奨。
・あらゆる種類の学校が企画する修学旅行、生徒間・姉妹校交流に関するイニシアティブ、ガイドツアーや教育目的の外出の中止。
・飲食サービス業(喫茶店、パブ、レストラン、ジェラート屋、菓子屋を含む。)は、テーブル席での飲食につき24時まで、着席しない飲食については21時まで許可。
という制限措置も規定した。
なお、日本からイタリアに入国する者に対して課される14日間の自己隔離等義務は、そのまま継続されており変更はない。
著者プロフィール
- ヴィズマーラ恵子
イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie