オーストラリアの診察室から
ガスコンロの未来
オーストラリアでは、室内でのガスコンロの使用を禁じる法案が提案されています。
最近の研究によると、ガスコンロの使用にる窒素酸化物やPM2.5の成分が小児喘息と関連する可能性が指摘されています。また、ガスコンロの使用は化学燃料による地球温暖化にも影響する可能性があるという研究結果もあります。
すでにメルボルンのあるビクトリア州では、2024年以降の新築住宅については電気コンロのみの設置が計画されています。同様の法案がシドニーの一部地域でも検討されています。
一部の医療研究機関や地球温暖化対策団体は、政府が電気コンロの導入をサポートするべきだとの意見を表明しています。
個人的な経験から言えば、私がこれまで住んだオーストラリアのいくつかの場所では、ガスコンロを備えた家は少なかったように感じます。私が現在住んでいるブリスベンでは、コンロに限らず、暖房も含め、ガスの使用は多くありません。プロパンガスのタンクを備えた家もまれに見られますが、気候は温暖で、ガスを使った暖房設備は不要なケースが多く、実際にガスを使っている家庭はほとんどありません。
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オーストラリア全体では約50%の家庭がガスコンロを使用しているようです。また、2021年のデータによれば、ガスコンロを使用している家庭の割合は増加していました。家庭によって状況は異なるかもしれませんが、電気コンロだとIHクッキングヒーターではなく旧来の電熱タイプも多く、温度調節が難しいとされています。これが、ガスコンロ増加の要因かもしれません。
炒め物などを頻繁に行う人々にとっては、やはりガスコンロの方が料理がしやすく、美味しく仕上がると感じるでしょう。ただし、オーストラリアでは料理をあまり行わない人も多く、調理をする場合でもローストなどオーブンを使用する料理も多いため、コンロの仕様は少ないかもしれません。今後こガスコンロに対する反対意見がどの程度出てくるかが注目されます。また、オーストラリアでは盛んなBBQもガスを使用することが多いですが、これに関する規制などは現段階では聞かれません。屋外で行うため、喘息への影響は少ない可能性もありますが、地球温暖化への影響はコンロの場合と変わりません。
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車など、さまざまな分野での電化が進展している中、今後の展開には興味が寄せられています。
参考
https://www.theguardian.com/environment/2023/jun/19/australian-homes-gas-net-zero-targets-report
https://amp.9news.com.au/article/b07a7c8c-0e00-4c8d-a414-b460326fde7a
https://www.theage.com.au/politics/victoria/gas-connection-to-be-banned-from-new-homes-in-victoria-20230728-p5dryd.html
https://www.9news.com.au/national/gas-stove-health-risks-indoor-air-pollution-childhood-asthma-explainer/b07a7c8c-0e00-4c8d-a414-b460326fde7a
https://asthma.org.au/about-us/media/new-report-goes-inside-australian-homes/
著者プロフィール
- 高尾康端
日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。
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