オーストラリアの診察室から
2023年女子ワールドカップと女子スポーツ
オーストラリアでは先月までニュージーランドとの共同開催で女子サッカーワールドカップが開かれていました。オーストラリアでは開催国ということもあり、かなりの盛り上がりを見せていました。この国の女子サッカー代表はマチルダスの愛称で呼ばれており、ほぼ毎日テレビで話題になっていました。キャプテンで女子サッカー界では有名なサム・カー選手がケガで予選に出場できないなどの問題もありましたが、無事予選ラウンドを突破しました。
優勝すれば新しい祝日とする案も出され、首相もその考えに賛同していました。しかし、残念ながらオーストラリア代表は準決勝でイギリスに敗れ、4位に終わりました。イギリスとの準決勝は700万人以上、国民の約43%がテレビで視聴したとされています。
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敗れはしましたが、オーストラリア女子サッカーチームの活躍が女子スポーツ界に多大な影響を与えることが期待されています。日本ではあまり取り上げられていないかもしれませんが、最近オーストラリア女子ネットボールチームも世界大会で優勝しました。ネットボールはバスケットボールにやや似たスポーツですが、ボールをドリブルすることはできません。オーストラリアでは盛んで、プロのチームも存在しています。
今回の女子スポーツチームの活躍により、女性スポーツの人気が高まっていますが課題も浮き彫りになっています。選手たちや専門家からは、育成選手の強化や施設の充実などが求められています。特に子供向けのチームでは、女性専用の更衣室が不足している施設が多いと指摘されています。また、女子ネットボールチームが優勝したにも関わらず、その試合は公共のテレビ局で放送されませんでした。サッカーに比べてネットボールは世界的にはポピュラーではない所為もあるかもしれませんが、世界大会優勝が偉業として取り上げられることが少なかったようです。女子スポーツのテレビ放送について見直す必要があるという声もあります。
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女子サッカーワールドカップでは選手たちに賞金が支給されますが、その金額は男子ワールドカップと比べて大きな差があることが問題視されています。また、スポンサーの数も男子大会に比べて少ないようです。オーストラリア政府は女子スポーツの発展を支援するために補助金を提供すると発表しています。今後、どのような変化が起きるかが注目されます。
参考
https://www.afr.com/companies/media-and-marketing/matildas-free-to-air-tv-audiences-eclipse-7m-for-first-time-in-decades-20230817-p5dx7q
https://www.afr.com/companies/sport/the-matildas-effect-albanese-gives-extra-200m-for-women-s-sport-20230818-p5dxpe
https://www.afr.com/companies/sport/matildas-turn-focus-to-funding-after-fifa-women-s-world-cup-loss-20230817-p5dx9b
https://theconversation.com/australia-just-won-the-netball-world-cup-why-isnt-there-room-for-multiple-womens-world-cups-in-our-sports-media-211413
著者プロフィール
- 高尾康端
日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。
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