オーストラリアの診察室から
オーストラリアからみた日本のコロナ感染症類型の変更
日本政府は新型コロナを現在の2類相当から5類に変更する方針を発表しました。コロナへの対処方法、マスク着用等コロナ予防と病院等での診察に関し、オーストラリアの現在の方針などを以下ご報告します。
オーストラリアでもオーストラリア政府、または州政府が指定した病気の報告義務があり、集計される感染症(notifiable condition)はあります。しかし日本のような症状や感染力等に基づく分類はありません。オーストラリアでは血液感染症のように、病気のタイプにより9種類に分類されています。
現在オーストラリアではコロナに対する規制はほとんどありません。州によって方針が違いますが、クイーンズランド州ではトラフィックライト(信号機)システムと呼ばれる方法を使っています。コロナの件数などをもとに州政府が(信号の)色を発表し、色別に規制、対策が実施されます。最近は発生件数が減ってきているので、色は緑になりました。体調が悪い場合は自宅でコロナ検査を行い、陽性の場合は体調がよくなるまで家にいるようにといった程度で、とても緩い規制です。コロナの統計自体も各家庭での迅速抗原検査が増えているため、どこまで統計が正しいか不透明です。マスクの着用も基本的にはどの色かによって決まりますが、医療施設などでは独自の判断で決めることもあります。
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自分の知る範囲ではクイーンズランド州では病院はコロナ患者を普通に診ていますが、ほとんどのところがコロナの症状がある人、またはコロナ陽性の人は最初にそれを報告するようにお願いしています。私が働いているクリニックでも、風邪やコロナの症状がある人は車内等、クリニック外で待機してもらい、特定の迅速抗原検査をまずやってもらいます。もしPCRをすでにやっている場合や指定されたもしくは同等の迅速抗原検査を自宅で行っていて、陰性の場合は風邪症状の患者専用の部屋で診察します。防護服の着用は医師の判断となっています。コロナ陽性の場合はほとんどは電話やテレビ電話による診療になります。実際に聴診などが必用な場合は外の駐車場で行う事もありますが、電話などで対応できないほど深刻だと基本的に病院での診察を勧めています。
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駐車場で診察するオプションがないクリニックもあります。風邪症状の患者にどう対処するかはクリニックにより異なります。抗がん剤治療で免疫が低下している患者なども来るので、待合室をどうするかは難しい課題です。オーストラリアではコロナが流行する前はほとんどの人がマスクを使用せず、風邪症状の人も同じ待合室にいるのが普通だったので、一部とはいえ、マスクを着用するようになったのは以前より改善されたといえます。しかしマスクを着用していても、以前のように風邪症状の患者とそれ以外の患者に同じ待合室で待っていただくようにするかはまだ検討が必用です。
日本ではメリットがないからコロナ患者は診ないというのは医師してどうかと意見があるようです。コロナ診療で通常より儲けようとするのは問題かもしれませんが、コロナ診療や発熱外来には普通より多くの費用が掛かるのも確かです。オーストラリアでは政府から防護服が支給されましたが、足りていません。従ってクリニックが自己負担で購入するか、防護服を使わないか、最初から風邪症状の患者を診察しないかのオプションになります。
コロナへの対策は各国様々ですが、日本での今回の5類への変更が多くの人が納得する方向にあるのか今後の議論に注目です。
参考
https://www.health.gov.au/topics/communicable-diseases/nationally-notifiable-diseases
https://news.yahoo.co.jp/articles/7cd385defb6e532eea9cf82b507ce0a6958961f2?page=2
https://www.city.sakai.lg.jp/kenko/kenko/kansensho/kansensho/jokyo_toukei/chosashiryo/kansenshohassei.html
著者プロフィール
- 高尾康端
日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。
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