オーストラリアの診察室から
オーストラリアのインフルエンザ
現在オーストラリアでは医療施設と空港ぐらいでしか、マスクの着用は義務付けられていません。いまでもコロナになった場合7日間の自宅隔離はありますが、ニュースで救急治療室に何人入院しているとかコロナ関連の死者が何人とかという話がニュースになることはありません。しかし医療現場のひっぱくは続いています。
オーストラリアは現在が日本の11月、12月のような感じです。現在でもオーストラリア全土で1日の感染者数は4万人ほどです。コロナも問題ですが、インフルエンザも大流行しています。過去2年間はコロナ対策によるロックダウン、マスクの着用義務などがあったためインフルエンザのケースはほとんどありませんでした。去年はオーストラリア全土で500件ほどでした。しかし今年は4月までの間で5000件以上のインフルエンザがありました。クイーンズランド州やニューサウスウェールズ州では、ここ数週間は1週間で3000件以上の新規感染が報告されています。
クイーンズランド州ではコロナが始まる前の2019などよりもインフルエンザの件数の上昇がはやいようです。以前ですと5月末か6月末ぐらいから件数が上昇してきましたが、今年は4月末ごろから件数が一気に増え始めました。
画像: https://www.abc.net.au/news/2022-05-25/flu-cases-soaring-in-australia-after-two-quiet-years/101093746
原因は様々のようですが、個人的な印象としては2年間インフルエンザがなかったこともあり、インフルエンザについてあまり意識していない人も多いようです。インフルエンザだとは最初思っていなかったらしく、コロナだと思い迅速抗原検査を何回もしたが陰性で、熱が何日も下がらないという方や、つい最近コロナに感染したでコロナではないはずなのに調子がよくならないと方も多いようです。
画像:vchal_iStock
オーストラリアでは5歳以下の子供、65歳以上の大人、そしてそれ以外の年齢でも糖尿病や重度のぜん息歴などのある人のインフルエンザワクチンはオーストラリア政府から保険適応で、自己負担なしで提供されていました。クイーンズランド州政府はインフルエンザによる医療機関への影響を減らすため、5月23日に5月24日から6月30日まで間インフルエンザワクチンをそれ以外のすべての人にも自己負担なしにすると発表しました。これは案としては良い案なのですが、インフルエンザワクチン接種を行う医療クリニック、薬局などにまったくの相談や通達なしでの発表でした。クイーンズランド州保健省やオーストラリア医師会もこの発表をニュースで知るということになりました。もともとオーストラリア政府から支給されているインフルエンザワクチン以外は各クリニックなどが個人的に仕入れているため、各クリニックなどで仕入れ値やワクチンの値段も少し違います。そのためクイーンズランド州政府がどのようにすべての人に無料にするか医療関係者からは心配されましたが、オーストラリア医師会などが中間に入ることにより交渉はうまくいきました。クイーンズランド州のこの政策を受け、他の州でも似たようなインフルエンザワクチン無料のプルグラムが発表されました。
インフルエンザワクチンの接種率が増えることにより医療機関への負担が少しでも減ることを願っています。
参考
https://www.abc.net.au/news/2022-05-25/flu-cases-soaring-in-australia-after-two-quiet-years/101093746
著者プロフィール
- 高尾康端
日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。
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