オーストラリアの診察室から
ブリスベンのロックダウン
ブリスベンでは1月7日に海外からの帰国者隔離ホテルで清掃の仕事をしている方がイギリス由来の新型コロナウイルス変異種に感染したという発表がありました。感染力が強いと言われているので市中感染が広まらないといいなと思っていたら、次の日の朝10時ぐらいにはブリスベン大都市圏を対象としたロックダウンの発表がありました。ロックダウンは1月8日の夜6時から1月11日の夜6時までの三日間とのことでした。この三日間は基本的に不要不急の理由がないかぎり外出しないようとの厳しい規制がありました。自宅を出ていい理由は以下になります。
●食料などを含む必需品の購入
●医療機関を受診する
●運動をする
●家族の介護
●遠隔でできない仕事、ボランティア、勉強
●法的義務がある用事
●ロックダウンのルールに従って行われる葬儀や結婚式
運動や買い物も基本的に家の近所のみです。この期間中は葬式は最大で20人、結婚式は10人の規制になりました。自宅以外のすべての場所でのマスクの着用が義務付けられ、レストランなどはすべて配達か持ち帰りのみ、映画館、ジム、プールなどもこの三日間は完全に閉鎖されました。
このロックダウンの目的は早い段階で厳しいロックダウンを短期間行うことにより、人々の移動を最小限に抑え、イギリス由来の新型コロナウイルスが広がるのを防ぐのが目的でした。それとコンタクトトレーシングの負担を減らすのが目的とされていました。イギリスでは現在50人に一人が新型コロナウイルス感染者といわれています。ひとたび広がってしまえば手がつけられないということでこの決断がくだされたようです。
朝にロックダウンの発表があってその日の午後からロックダウンになったので、急に予定の変更を余技なくされた方は自分の周りにもたくさんいました。子供の誕生日会が中止になったりした方もいました。なぜか三日間のロックダウンの予定で、ロックダウン中も食料品などは買いに行けるにも関わらず、スーパーなどには長蛇の列ができました。1月8日のロックダウン前にブリスベン大都市圏を離れようとした方も大勢いたようですが、このロックダウンのルールではブリスベン大都市圏から他の地域に行った場合、そこで隔離しないといけないことになっていました。
(DLMcK-ISTOCK)
三日間のロックダウン中、ほとんどの人がロックダウンのルールに従ったようですが、中にはルールに従わず罰金を取られていた方もいたようです。
幸い三日間のロックダウン中一人しか新しい患者はでませんでした。このロックダウンの元になった清掃の仕事をやっている方のパートナーの方ですぐに隔離していたようです。
ロックダウンが終わったあとも、1月2日以降にブリスベン大都市圏にいた人は1月22日の夜1時まではほとんどの場所でのマスクの着用義務が続きました。スーパーやショッピングモールなどでは罰金があるからかもしれませんが、ほとんどの人がマスクをつけ、ソーシャルディスタンスなどのルールを守っていました。そして予定どおりに1月22日の夜1時でブリスベン大都市圏の規制は緩和されました。結局22日までの間に新しい市中感染はありませんでした。現在ブリスベンでマスクを着けている人はほとんど見かけません。
(Shanenk-ISTOCK)
まだまだ今後、どうなるかわかりませんし、すでに新型コロナウイルスの市中間感染が広がっている場所では難しいかもしれませんが、短い期間でのロックダウンは新型コロナウイルスの広がりを抑える方法の一つとして有効かもしれません。
参考
https://www.theguardian.com/australia-news/2021/jan/08/brisbanes-covid-lockdown-everything-you-need-to-know
https://www.9news.com.au/national/coronavirus-queensland-update-greater-brisbane-three-day-lockdown-positive-covid19-case-nine-hotel-quarantine-latest-numbers/08b816b5-fcd4-4b18-9827-55b7688a5a3b
https://www.theguardian.com/australia-news/2021/jan/08/brisbane-lockdown-three-day-shutdown-called-to-contain-dangerous-uk-covid-variant
https://www.bbc.com/news/uk-5176827
https://www.qld.gov.au/health/conditions/health-alerts/coronavirus-covid-19/current-status/easing-greater-brisbane-restrictions
https://itt.abs.gov.au/itt/r.jsp?RegionSummary®ion=3GBRI&dataset=ABS_REGIONAL_ASGS&geoconcept=REGION&measure=MEASURE&datasetASGS=ABS_REGIONAL_ASGS&datasetLGA=ABS_NRP9_LGA®ionLGA=REGION®ionASGS=REGION
著者プロフィール
- 高尾康端
日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。
Twitter:@dryasutakao
Facebook:Dr Yasu Takao
ブログ:https://www.dryasutakao.com.au/blog