ドイツの街角から
ドイツ人のオーガニック食品に対する購買意欲が低下 ディスカウントストアと提携で売上アップは可能か
トレンドはディスカウントストアとのパートナーシップ
このところ、特にオーガニック専門店は窮地に立たされている。オーガニックマーケットチェーンの「ベーシックBasic」が破産を申請し、オーガニック小売店のスーパー「ビオマルクトBiomarkt」がそれに続いた。また、オーガニック食品だけにこだわらない従来型のスーパーマーケット「テグートTegut」でも、オーガニック分野は21年比で2%の微減と報告された。
そこで少し前までは、考えられなかった「オーガニック食品をディスカウントストアで販売する」という措置がトレンドとなり始めている。
例えばドイツ大手ディスカウントストアのアルディは、有機栽培生産者団体「ナトゥ―ルランドNaturland」の食品を23年上半期より販売する予定だ。
このパートナーシップは、「包括的なオーガニック製品をさらに発展させるための重要なステップ。今回の提携は、消費者の買い控えを補う新たな販売チャネルを提供するもの」と同社広報担当者は述べている。
アルディ競合のドイツ大手リドルは、すでに2018年11月から有機栽培者団体「ビオランドBioland」と協業し、オーガニックのリンゴやハーブなどを販売し始めた。
当時、生産者組合がディスカウントストアと提携することは考えられないとされていた。そしてリドルと同団体とのパートナーシップは業界に大きな波紋を広げた。競争力のある価格で顧客の支持を得るのは、ディスカウント業者が最適のようだ。双方にとってウィンウィンな関係になるからだ。
コロナが大流行した時期のように、スーパーマーケットや専門店で特別な高品質の食品を探すのではなく、現在では「価格」という一点に焦点が当てられている。
オーガニックのトレンドは、今のところ明らかにディスカウ ト部門に移行している。だが、有機農業の不確実性は高いままで、製品分野によって見通しは異なっている。
「2030年までに有機栽培面積のシェアを30%にする」というドイツ連邦政府の目標は、実現できるのか注目したい。
参考記事
t-online 他
著者プロフィール
- シュピッツナーゲル典子
ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。
Twitter: @spnoriko