ドイツの街角から
今冬のトレンド「エネルギー休暇」 温暖な国で越冬して自宅の暖房費を節約する術とは?
海外越冬で暖房費節約は妄想?
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「温暖な地で冬を過ごす」・・・ドイツ年金生活者にとって、何も珍しいことではない。しかしエネルギー危機を脱するために、生活環境が許せば、もっと多くのドイツ人が国外脱出を試みるだろう。
ドイツ消費者センターによると、持ち家や賃貸などにより異なるが、年間暖房費の約7割が冬に発生するそうだ。そこで冬は海外脱出したほうが安上がりなのではと考えるのは当然だろう。
ところが不在中も暖房を完全に切る訳にはいかないという。特に断熱性の低い60年~70年代築の建物は、冷たい外気の影響を受けやすく、室内の壁にカビが発生しやすいそうだ。ということは不在中も暖房費はゼロにならない。
暖房を弱めることで節約できる可能性はあるものの、現時点では節約効果を正確に数値化することができない。おそらく暖房がいらなくなる今春以降に詳細が判明するだろう。
さらに賃貸の場合、不在中も家賃や光熱費等を引き続き支払わねばならない。長期旅行者は、健康保護も念頭に置く必要がある。EU圏内では、国民は法定健康保険で一定程度カバーされている。ただし、欧州以外の国には適用されていない。通常8週間を超える期間の健康保険は高額になりがちだ。
暖房費を節約した分、海外滞在の資金にするという「エネルギー休暇」と理解すると、この計算はうまくいかないようだ。もちろん、旅行者が滞在中にドイツの自宅を貸し出すこともできる。とはいえ賃貸アパートの場合は、家主の同意が必要だ。さらに家賃として得たお金には税金がかかるので注意したい。
越冬のスタイルは一か所ロングステイだけではない。例えば豪華クルーズ船の需要も増加傾向だ。コロナ禍を経て、この冬は数十隻の船が世界一周クルーズに出かける予定だ。少なくともその間、暖房費は含まれている。
ドイツ自治体公益事業者は、末端顧客向けのガスと電気の料金が恒久的に2倍になると予想している。地球温暖化の影響もあり、将来的に暖冬を迎える可能性もあるとはいえ、値上げのつけはやはり消費者に回ってくる。
とどのつまり快適な冬を過ごす術は、費用をどう捻出するかにかかっているようだ。
著者プロフィール
- シュピッツナーゲル典子
ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。
Twitter: @spnoriko