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ドイツの街角から

シュピッツナーゲル典子|ドイツ

ワークライフバランスに優れた欧州の国ランキング 3位ノルウェー、2位スペイン、ドイツは?

仕事が楽しいと感じるのはどんな時?

カッセル大学の労働における世界の変化に関する専門家ケルスティン・ユルゲンス教授は、「仕事が人を幸せにするかという基準はない。人生設計の考え方や個人の能力、また、介護や看護の仕事を兼業しているかどうかによって大きく異なる」と語る。

「仕事の満足度を左右する要因はさまざまで、労働時間の調査からわかることをあげると、時間の編成に対する主権の問題は、非常に重要。また、働く場所を自分で決められるかどうかも重要なポイントである。これはコロナパンデミックによってさらに強まった」(ユルゲンス教授)。

決め手となるのは「評価」

一般に、感謝の気持ちは幸福感に強く影響するといわれる。それは、チーム内で何かを成し遂げたり、看護師などの仕事が社会的に高く評価されたりなど、優れた存在であることを認めてもらうことだ。

「仲間からのフィードバックが必要な時代だ。その他の幸福の要因としては、収入のレベルや仕事の安定性だけでなく、どれだけ有意義な仕事を経験できたかということが挙げられる」(ユルゲンス教授)

ワークライフバランスは高所得者だけのもの?

残念ながらドイツの看護師や介護師の過酷な労働条件は、人材不足や過労の環境が長らく改善されていない。例えば看護師として老人ホームに勤務する女性Sさん(52歳)は、こう明かしている。 

「老人ホームで35人の入居者の世話をしている。4時半に起きるため、夜は早く寝ないといけない。仕事は好きで楽しいのですが、子供たちや家族、そして自分自身のために時間を割くことができない。75%勤務ですが、多くのことがおろそかになっていると感じている。」と、家庭と仕事の両立のバランスをとることの難しさを述べるSさんだ。

「働かなければお金は足りませんし、夫が私より少し多く稼いでいるのが幸いです。フルタイムで仕事をしている同僚には子供もいるし、副業で収入を得ることも多い。そうでないとお金が足りないんです」と告白する。

ユルゲンス教授は、収入の問題がワークライフバランスの決定的な要因であるという。連邦統計局によると、ドイツでは5人に1人が低賃金部門で働いているそうだ。

「困難な生活状況にある彼らは、実際に自分の存在を確保するために一定の時間を働かなければならない人たちだ。それがどんなにストレスの多いことであっても。ワークライフバランスや休暇について考えることができるのも、高所得者の特権といえるでしょう。多くの人は、単に選択肢がないだけなのです」(ユルゲンス教授)

参考までに。ドイツでの平均給与は、年間51,009ユーロ(税込み・約722万円)。年間給与の中央値(平均)は、税込みで44,074ユーロ(624万円)。これは、Gehalt.de Stepstone.de ポータルサイトの合同給与レポート 2022 で、60 万件以上の給与データが分析された結果で明らかになったものだ。

コロナ禍により、労働時間と場所の選択に柔軟な働き方が浸透したとはいえ、「ワークライフバランスの理想と現実」の狭間で苦しんでいる庶民は多い。ギャップが埋まる日は来るのだろうか。

 

Profile

著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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