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ラッシャー貴子|イギリス

ラッシュフォード選手、その後のあれこれ - 新しいプロジェクトは子どものブッククラブ

(写真:frimages-iStock)

先月このブログで、英国のプロのサッカー選手、マーカス・ラッシュフォード選手のことをお話しした。プレミアリーグ、マンチェスター・ユナイテッドで成績を上げながら、子どもの貧困問題を支援している23歳の若者だ(そのブログはこちら)。

すばらしい活動をしているのにいつも控えめな彼のさわやかな言動を見てすっかりファンになってしまったので、つい彼の動向に目が行ってしまうのだが、今月も彼の活躍はとまらなかった。そこで今回は、今月のラッシュの言動や彼の周りで起きたあれこれをお伝えする。(サッカーに疎いわたしも、つい最近、彼の愛称がラッシュであることを知った。短くて便利。ラッシーというのもあるようですね。かわいい)。

(男性ファッション・カルチャー雑誌GQの「2020年を代表する活動家」に選ばれたタキシード姿のラッシュフォード選手。ほかにも国営放送BBCがその年の最優秀スポーツ選手を選ぶスポーツ・パーソナリティー・オブ・ザ・イヤーでも社会貢献が認められて特別賞が決まるなど受賞が目白押し)

子どもの貧困問題その後

前回のブログの時点では、この秋からイングランドの学校は休みの間に無料給食は出ないことに決まっていた。ところが再検討を求めるラッシュフォード選手の署名運動に世論が大きく味方したこともあって、政府は11月初め、来年いっぱいは食料支給の資金を出すように方針を転換した。彼の呼びかけが政府の決定をくつがえしたのは今年2度めのことで、この変更が決まった日、ジョンソン首相はまた彼に電話をして直接話をしたそうだ。

翌日、ラッシュフォード選手はツイッターで、「これはみんなの勝利だ。慈善団体やボランティアの人たち、学校の先生、ソーシャルワーカー、(食べものを無料で配ってくれた)地元の商店の人たちみんなで、思いやりは強い力になることを示したんだ。首相には困っている家族を代表してお礼を言った。きっとみんな、お礼を言ってほしいだろうと思ったから。この方針転換はありがたいけれど、まだまだやることは山積みだ」(筆者抄訳)と語った。自分じゃないよ、みんなでやったんだよと強調するあたり、団体競技をするスポーツマンらしくて、あいかわらずさわやかだ。

ちなみに「思いやりは強い力になる」とした部分の英語はkindness is power。やさしい気持ちはふわふわしていそうだが、それだけではないことを思い出させてくれて大好きな言葉になった。わたしは彼のツイートで初めて見たけれど、前からあった表現のようだ。

food bank - 1.jpg

(スーパーでよく見るフードバンクの箱。レジ横に置かれたこの箱に食べものを入れると団体が必要な人に配ってくれる。ロックダウンの町でもスーパーは開いているので、この箱はずっと置かれている。筆者撮影)

その後も食料支援の輪は、ラッシュフォード選手に影響を受けた子どもたちが自主的に食べものを集めて寄付をしたり、コメディアン/俳優のラッセル・ブランドなどのセレブが協力を呼びかける動画を公開したりと、着実に広がり続けている。またマンチェスター・ユナイテッドに長年在籍した伝説の監督、アレックス・ファーガソン(あまりにも有名なのでサッカー音痴のわたしも名前は知っていた)もラッシュとタッグを組んだ。タイム紙が行うクリスマスの寄付金を通じてラッシュが支援する慈善団体FareShareに寄付するので、有名サッカー選手たちに協力を呼びかけたのだ。つまり、人気を使って人や寄付を呼び寄せてほしいということらしい。

さらにクリスマス前には、BBCテレビで子どもの貧困と戦う彼のドキュメンタリー番組も放映される。この番組、制作側は「彼の情熱や決断のしかたなど、ピッチと違う彼の顔を見てほしい」としているので、ラッシュ本人を取材した内容のようだが、彼自身はあいかわらず「自分の話ではない、助けを求める人に何ができるかということが大切だ」と控えめなコメントをしている(いい人だ)。

残念ながらゴシップのターゲットにも

11月も大活躍のラッシュフォード選手だが、大きな話題になると悲しいかな、足を引っ張る人がやはり現れるもの。先週には、彼が今年に入って家を数軒買っていたことをタブロイド紙が報じた。家を何軒買ったって何も悪いことはないと思うのだけれど、「こんなに金持ちなのに寄付金集めするなんてケチだ、自分で払え」とでも言いたいのかな(感じ悪いぞ)。

しかし、われらがラッシュはこんな記事にも真正面から対応。記事を引用リツイートして、「何もない環境の出身だから、自分と同時に家族の将来も守らなくてはならない。だから今年から不動産投資をすることにした。これと支援活動を結びつけないでほしい」(筆者抄訳)と正々堂々と語ってフォロワーに熱く受け入れられている(かっこいい)。

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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