パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです
ルイヴィトン・エルメス ハイブランドの絶好調とハードディスカウントショップ
インフレ・消費低迷と不景気な世の中、ルイヴィトン、エルメスなどのいわゆるハイブランドの絶好調ぶりには、唖然とさせられるところです。
ルイヴィトンとエルメス ハイブランドの絶好調
LVMH(ルイヴィトングループ)は、先日、時価総額が4,000億ユーロを超え、LVMH モエ・ヘネシー・ルイヴィトングループ会長ベルナール・アルノーは、昨年12月に個人資産もイーロンマスクを抜いて、世界一の資産家となったというニュースに沸いていました。
パンデミックでは、一時、低迷したものの、観光客も戻り、世界市場も戻りつつある中、結果として、ルイヴィトンはパンデミック前以上に飛躍した結果となっています。
ルイヴィトンは、ここのところ、クリスマスの際のショーウィンドーのデコレーションにしても、シャンゼリゼのルイヴィトンビルの草間彌生とのコラボのための巨大草間彌生のオブジェなど、やることがド派手で、一歩間違えば下品になりかねないところが、目についていましたが、これだけインパクトのあるPRを全面に押し出していたことは、それなりの今のルイヴィトンの勢いがこの数字に裏付けられていたことを思い知らされるところです。
また、ルイヴィトンとは全く異なるビジネスモデルを貫き、さほど大々的に主張していない感じのあるエルメスも、これまた30%近い増収増益で世界中の社員に対して特別ボーナス4,000ユーロ支給、株主に対しては特別配当金を支払うことや、2023年にウール県(ノルマンディ)ルーヴィエとアルデンヌ県ラ・ソルモンヌに2つの皮革製品工場を開設することを発表しています。
経営危機に瀕するギャラリーラファイエットや中堅ブランド
一方、年明けから、続々と発表されているCamaille(カマイユ)、Go Sport(ゴースポーツ・スポーツウェア・スポーツ用品店のチェーン)、Kookaï(クーカイ)、Pimkie(ピンキー)そこそこ有名な中堅ブランドの倒産や経営危機には、少なからず切ない思いをしていたところに、近々では、ギャラリーラファイエットが国内26店舗を対象にセーフガード手続き(再建のための支払い猶予や遅延金の利息免除)を申請したなど、「おいおいお前もか・・」という残念なニュースが続々と上がってきています。
デパートに関しては、すでにパンデミック直後にプランタンがフランス国内の7店舗を閉鎖していますが、ギャラリーラファイエットもなんとか持ちこたえていたのかと思いきや、その例外ではなかったようです。それでもプランタンにしても、ギャラリーラファイエットにしてもパリの店舗は観光客に支えられて、いつ行っても(といってもそんなには行かない)結構な人で賑わっているイメージがありますが、一般的にはデパートという営業形態そのものが、もはや時代の潮流からはズレてしまった存在のようにも感じられ、たまに行くことはあっても、昔のようにとりあえず、「買い物なら色々なものが揃っているデパートに行く・・」という時代は終わっていて、実際に、色々なブランドのものがあっても、品揃えも半端なうえに、「中途半端に高い」という始末の悪さで、今やデパートに揃えてもらわなくても、なんでもネット上で検索できる時代、ネットショッピングにかなり移行しつつあるだけでなく、直に手に取って商品を見たい人も専門店をピンポイントで探した方がより満足度が高いのです。
中堅どころのブランドの経営危機に関しても、このネットショッピングの浸透への対処が遅かったことが原因の一つでもあると考えられ、どのブランドも、そこそこ知名度もあり、一時は国内にかなりの店舗数を広げ、どこのコマーシャルセンターに行っても必ず店舗があるようなお店だったのですが、店舗を広げすぎたことが仇となり、その店舗の維持にもコストがかかるわりには、比較的、お手頃価格の商品を求めていた消費者層はインフレとともに、価格に対してかなりシビアになり、もっと安いかもっと魅力的なものを積極的に探し求める人々で、いつの間にか、これらの人々に見捨てられていったのかもしれません。これらのブランドに共通するものは、比較的低価格ではあるけど、安くもないという中途半端なところで、流行とはよく言ったもので、顧客のニーズに乗り切れなかったということなのかもしれません。
ハードディスカウントショップの繁殖
中堅どころのブランドが続々と経営危機に陥るなか、最近、目に見えてパリに増えているのがハードディスカウントショップの類のお店で、日本でいう100均のお店に似たようなお店で、2ユーロショップ(ワンコインショップ)とか、日用品や化粧品、お菓子などを超低価格で販売するNormal(ノーマル)というチェーン店などが、あっという間に増えてきています。最近、近所にAction(アクション)というハードディスカウントショップがオープンして、当初はその名前もよく知らなかったお店が最近では、続々と店舗数を増やしているようで、覗いてみると、これがびっくりするくらい安くて色々なものが置いてあって楽しいのです。
アクションは一部の固定商品を除いて、過剰在庫や倒産した会社の商品、売れ残り商品など、機会に応じた買収を優先する購買戦略の結果、品揃えは常に変化しています。なので、一部の商品を除いて、いつ行っても同じ商品がおいてあるわけではないのですが、とにかく安くて、ビックリ価格のわりには、商品の質も悪くないため、定期的に足を運んでしまうことになるようです。この会社はとにかくコストを徹底的に抑えるビジネスモデルを確立しており、テレビやラジオなどでのコマーシャルは避け、SNSやクチコミに頼ることで、宣伝コストを最小限に抑え、店舗の不必要な装飾や音楽などを使わず、同じ製品をすべての店舗で大量に購入し、創業以来、数年の間に単なる仕入れ業者から、コストコントロールのために数十のプライベートブランドを持つチェーンへと変貌を遂げています。
超低価格のうえ、けっこうおもしろい商品もあるため、ちょっと日本で100均ができたばかりの頃の感動とちょっと似ていますが、これが今のインフレの中でもけっこう人が集まり、けっこうな買い物をしている様子を微妙な気持ちで見ています。およそパリらしいとは言えないような、このようなお店が増殖することは嬉しいような寂しいような感じではありますが、これがインフレの時代の潮流というものなのでしょうか?
とにかく、この時代、徹底的に高級なものは、変わりなく売れ続けるどころか、ますますの発展ぶりで、大多数の一般大衆は、激安のハードディスカウントショップに向かうというのも格差が今まで以上に両極化している感じです。
インフレですべての人が喘いでいるわけでもなく、確実にこの世の中では儲けている人もいるわけで、インフレは全く関係のない超高級ブランドというのは、隆盛を極め、しかし、一方ではインフレだからこそ繁殖したとも思えるこのハードディスカウントショップの繁殖があるのかもしれません。
どちらにしても、一番、煽りを食っているのは、価格も製品も営業形態も「中途半端」な位置にいたもので、この位置に属するブランドは何らかの措置を取らない限り、この時代を乗り切っていけないのかもしれません。
著者プロフィール
- RIKAママ
フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。
ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」
Twitter:@OoieR