パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです
フランスのコロナウィルス第7波のえげつないリバウンド
フランスのコロナウィルス感染は、依然として続いており、多少の上がり下がりはあるものの、5月初旬までは、安定した?数字で1日の新規感染者も4〜5万人程度でおさまっていて、集中治療室の患者数も減少しつづけていたので、国民の関心もどちらかと言えば、ウクライナでの戦争や大統領選挙、国民議会選挙や上昇し続けるインフレなどの問題に傾き、コロナウィルスに関する報道もほとんど影を潜めていました。
ところが、5月半ばにとうとう最後の規制でもあった公共交通機関でのマスク着用義務化が撤廃されて以来、その約2週間後からコロナウィルス感染は少しずつ増加傾向に転じ始め、6月に入ってからは、ちょっとその危うい感じも本格的になってきました。パンデミックが始まって以来、数々の対策がとられたり、人の集まる行事(ノエルやバカンスなど)がやってくる度に、良きにつけ悪しきにつけ、なんらかのアクションがあった後、2週間後には、その結果が現れる現象を目の当たりにしてきました。まさに今回のリバウンドのきっかけの一つは、公共交通機関のマスク着用義務化の撤廃であったと私は思っています。それまでもすでに、もうほぼ日常を取り戻したかの生活ぶりではありましたが、この公共交通機関のマスク着用義務化撤廃により、フランス人の最後のタガが外れた感じでした。最後のタガが外れたことで、それはマスクの有無だけには留まらず、まるでパンデミックは終息したような錯覚をフランス人に与えてしまったのです。街中、レストラン、お店などには必ず置かれていたアルコールジェルの数も一気に減り、フランス人の挨拶代わりのビズー(頬と頬を合わせる挨拶)も復活していました。4月の時点で日本に一時帰国していた私にとっては、日本とはまるで別世界・・むしろ、4月の時点であまりに日本人が未だにコロナウィルス対策を徹底してやっており、公共交通機関どころか、街中でのマスク率もほぼ100%近いことに驚いたくらいでした。
それでも5月までは、そこそこ安定していたと思われていたものの、6月に入ってからはじわじわと上昇を続け、6月21日の時点で、急に1日の新規感染者数が95,217人にまで跳ね上がり、これには、びっくりして、「もう10万人間近ではないか!!」、「これは完全に第7波に乗ってしまった!」とギョッとさせられたのも束の間、さらにその1週間後の28日には、さらに、147,248人にまで跳ね上がったのには、もう呆然としてしまいました。さすがにここまで1日の新規感染者が増えていけば、もうここからは、倍々に増えていくのは目に見えているうえに、さすがに入院患者数、集中治療室の患者数など、すべての指標となる数字は、全て一転して増加に転じ、1日にコロナウィルスのために入院する患者数は1,000人を超え始めました。Santé Publique Franceのデータによると、一週間で54.6%、入院患者数は過去7日間で24%増加し、パリ・オー・ド・セーヌ県での10万人あたりの感染者数は10万人あたり1,000人を突破しています。100人に一人は感染している計算になります。現在フランスでのコロナウィルス感染の主流に置き換わり始めている変異種BA5は、これまで以上に感染力が高く、それに加えて、昨年まではマスクで守られ、ヘルスパス、ワクチンパスである程度、守られていた空間が野放し状態になっているということは、考えてみれば、昨年以上にずっと感染のリスクが高いわけで、ワクチン接種済みとはいえ、ワクチンの有効期間も考えると、現在のえげつないほどのリバウンド状態は当然とも言えます。
感染対策と政治
そもそも、公共交通機関内より以前、屋内でのマスク着用義務が撤廃されたのは3月中旬のことで、当初、政府がこの屋内でのマスク着用義務化撤廃のための基準値を提示していたにもかかわらず、これをクリアすることなく結局は、「最も重症化のリスクの高い弱い立場の人々を守りたい」と4回目のワクチン接種(2回目のブースター接種)を80歳以上に開始するという発表と抱き合わせで日程的には予定どおり屋内でのマスク義務化を撤廃してしまいました。そもそも、4回目のワクチン接種を広げていかなければいけないような状態で、同時に行うことがマスクの義務化撤廃とは、甚だ矛盾した話です。ウクライナでの戦争による混乱もありましたが、それ以上に大統領選挙を控えての国民へのご機嫌とりに見えなくもありませんでした。
そして、5月の公共交通機関のマスク義務化撤廃発表も国民議会選挙を目前に控えてのもので、他の場所では、まるで何もなかった日常のような生活に戻っていたフランス人でさえ、おとなしく公共交通機関内ではびっくりするぐらいみんながマスクをしていたというのに、せっかく習慣づいたマスク義務化はせめて公共交通機関内くらいは、継続してもいいのではないか?と思っていました。義務化されなければマスクはしないのがフランス人です。街中では、100人に1人、もしくはそれ以下のマスク率、メトロの中では、20人に1人くらいのマスク率になっていました。
日本でも「選挙前だから・・」という言葉はよく耳にすると思いますが、選挙前に政府が国民に阿るようなことをするのは、フランスも同じなのです。国民を守ることよりも選挙が優先するこの事態には、閉口するばかりです。
マスクを忌み嫌うフランスの文化
もともとマスク嫌いのフランス人です。マスクは何よりも美しくなく、病気を連想させる負のイメージのあるもので、日常生活とはかけ離れたものでした。パンデミック前などは、パリでもマスクをして観光している日本人を見ては、「日本人はなんでマスクをしているのか?」と侮蔑的に問われたことも何度となくありました。
屋内でのマスク義務化が撤廃されてからは、日本とは逆の同調圧力が働き、スーパーマーケット内でもマスクをし続けているフランス人に向かって、「おまえ、いつまでマスクなんかしているんだ!」と絡まれている人を見かけたこともあります。絡まれていた女性は、「ここのところ、花粉症がひどくて・・」と交わしていましたが、マスクをし続けることに言い訳しなければならない・・そんな風潮すらで始めていたのです。マスク着用義務化撤廃とは、マスク着用が禁止されているわけではないのに、日本とは逆のマスクに対する同調圧力が働いているのです。
今回のえげつないリバウンドに接して、フランス政府・ブリジット・ブルギニョン保健相は、「公共交通機関や屋内の人の多い場所ではマスク着用を推奨する」と発表し、翌日には、エリザベット・ボルヌ首相も同様の呼びかけをしています。しかし、ここはフランス、日本じゃあるまいし、「推奨する」などという言葉でマスク着用がフランス国民に徹底するはずはありません。それでも、ここ数日で、若干は公共交通機関のマスク率は上がったような気もしていますが、依然としてマスクをしていない人が絶対多数で、罰金つきの義務化でなければ、フランス人は「推奨」されていることをあっさり受け入れるような国民ではありません。
しかし、昨日発表された世論調査によると、「71%のフランス人が公共交通機関内でのマスク義務化を望んでいる」という数字が出て、ちょっとびっくりしています。なぜなら、公共交通機関の中に70%もマスクをしている人がいるとは思えないからです。これだけの人がマスクが必要だと思っているのに実際にはマスクをしていないのは、謎です。何も義務化されずとも、必要だと思っているならば、マスクをすればいいものをなぜ義務化されなければマスクをしないのか? 2年半も続いているパンデミックでようやくフランス人にもマスクが定着したと思いきや、未だマスクに対する抵抗はフランス人には根深く潜んでいて、マスクをするためには、「義務化されているから仕方ない」という言い訳が必要なのかもしれません。
2回目のブースター接種(4回目のワクチン接種)
当初の私の読みでは、感染は夏のバカンスシーズンに徐々に拡大し、気温の下がってくる秋頃に再び感染爆発が起こると見ていました。私はブースター接種(3回目のワクチン接種)を昨年の12月に受けていたので、ワクチンの有効性が極端に落ちると言われている6ヶ月後から様子を見て、秋になる前には考えなければいけないと思っていました。フランスでは2回目のブースター接種は3月の段階で80歳以上を対象に開始されていますが、だんだんと年齢も下がり、現在では60歳以上と重症化リスクの高い既往症等のある人々と対象範囲が拡大しています。私のところには、5月の初旬の段階で、国民健康保険から、2回目のブースター接種推奨のお知らせが届いています。私には心臓疾患があるため、国民健康保険の記録からリスクの高い人に分類されているようです。開発されてあまり時間もたっていないワクチンをこれから6ヶ月ごとにワクチン接種を受け続けるのにも抵抗があり、少しでもその間隔は長くとりたいし、これまで先延ばしにしてきましたが、想像以上に早いリバウンドに直面して、そろそろ2回目のブースター接種をしなければいけないかと思い始めています。最初のワクチン接種をする時にも迷っていましたが、結局、ワクチン接種による副反応などよりも感染するリスクの方が圧倒的に高いと考えて、ワクチン接種に踏み切りました。今回もまた、えげつないほどに感染が拡大しはじめて、また、同じ事態になっています。
先日、夏風邪をひいて、しばらくおとなしくしていたのですが、いつまでもすっきりしなくて、もしや・・と思って薬局に行って、久しぶりに検査をしてきました。フランスではワクチンパスポートがあれば、現在でも検査は無料です。結局、結果は陰性でしたが、ちょっと風邪をひいただけでもドキドキしてしまうこの状況には、ほとほと嫌気がさしています。私は、公共交通機関内でのマスク義務化が撤廃されても、マスクはし続けており、十分に感染対策には気を配っているものの、やはり、この感染爆発に接していつどこで感染するか気が気ではありません。政府が少なくとも公共交通機関でのマスク着用義務化を元に戻してくれるなど、何らかの対策をとらない限り、ここまで感染が増加に転じてしまった今、感染は倍々に増えていき、加えてこれからの本格的なバカンスシーズン到来や続々と起こる公共交通機関のストライキによる人混みなど、感染が低下する理由は何一つありません。やはり少しでも安心して生活できるようにそろそろ、ワクチン接種の予約をしようと思っています。
著者プロフィール
- RIKAママ
フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。
ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」
Twitter:@OoieR