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パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

ワクチンパスポート法案採択と1日の新規感染者30万人の現実への疑問

オリンピックエンブレムが掲げられているパリ市庁舎前 人出は、いつもと変わらない      筆者撮影fr

1月には、これまで使用されていたヘルスパスが通用しなくなり、ワクチンパスに移行することは、12月の段階で発表されていましたが、ついに、先日の国会で、ワクチンパスポート法案が採択され、憲法審議会の審査を待って、週末にもワクチンパスポートが施行されることが決定しました。

フランスでは、これで、これまでヘルスパス(ワクチン接種証明書または、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書、PCR・抗原検査陰性証明書)があれば、入場できていた場所(レストラン・カフェ、文化施設・娯楽施設、スポーツ施設、長距離移動の公共交通機関、イベント会場などなど)にワクチンパスがないと入場できなくなります。つまり、検査の証明書は、通用しなくなるということです。これまでの公共交通機関利用に加えて、相乗りなどの移動手段に関してもこのヘルスパスの提示が必要となることが加えられています。

このワクチンパスポートの提示は、16歳以上にのみ該当するもので、16歳以下の未成年に関しては、これまでどおりのヘルスパス(検査の陰性証明書)が通用することになっています。また、ワクチン接種の途中段階の人(1回だけ、あるいは、前回の接種から7カ月が経過しブースターをまだ受けていない人など)に対しては、一時的に検査の陰性証明書の提示が認められます。

また、ワクチンパスの関係事業所の管理者は、このワクチンパスの整合性を確認するため、「提示された文書が提示した人物と関連性がないと信じるに足る重大な理由」がある場合には、写真付きの公的書類の提出を求めることができることになりました。偽ヘルスパス・ワクチンパスポートが横行していることに対応する規定です。

そして、偽ワクチンパスの罰則も強化され、虚偽のワクチンパスポートを不正に所持した場合(偽造、第三者からの借用を問わず)、3年の禁固刑と45,000ユーロの罰金が課されるようになります。この罰則は決して軽くはなく、複数の虚偽の書類を不正に所持した場合には、5年の禁固刑と75,000ユーロの罰金に引き上げられることになりました。

ひたすら上昇し続ける感染状況に、ひたすら、ワクチンパスポートの施行に躍起になっていた政府は、これで、ようやく意を遂げることになります。

ワクチンパスポートは充分な対策か?

ワクチンパスポートの施行は、何よりもワクチン未接種者に圧力をかけ、ワクチン接種に導く(追いやる)ことが目的であることは言うまでもありませんが、実際にどれだけのワクチン未接種者がワクチン接種に向かっているのかは未知数で、政府は、ここのところ、あらたに初回のワクチン接種をした人数を発表していますが、たしかに、少しずつは、初回のワクチン接種に踏み切る人々もいるのですが、この初回接種の数には、未成年のワクチン接種(特に12歳以下のワクチン接種が開始された)も含まれており、成人の初回ワクチン接種者がどれだけ増えているのかについては、疑問が残るところです。特に80歳以上のワクチン接種率は、他のすべての成人と比べて低いことは、深刻な現実の一つです。もともと、あまり外出もしない80歳以上の高齢者にとっては、ワクチンパスは、さほど必要もなく、情報に疎かったり、無関心であったり、頑として意を曲げない人々も多いのです。

そもそも、現在、急激に感染拡大しているオミクロン株は、ワクチン接種をしているからといって、重症化のリスクを軽減するだけであって、感染しないわけではなく、感染拡大がおさまるものではありません。にもかかわらず、ワクチンパスポートを持っていさえすれば、もうすっかり元の日常に戻れたような気分になっているフランス国民の間で、感染がおさまるはずは、ないのです。

1日の感染者が30万人超えでもすっかり元の日常生活のフランス

オミクロン株は、重症化するケースが低いと言われていることもあり、もう1日の新規感染者数が10万人であろうと、30万人であろうと、フランス人の危機感は、すっかり薄れているのが現実です。もう、周囲の人の中に感染者が出るのも日常茶飯事のようになっていて、正直、誰かが感染したという知らせを聞いても何の驚きも感じなくなっています。いつ、自分に順番がまわってくるのか?そんな気さえしてしまうほどです。

先日、ある会合の招集がかかったので、私自身は、「嫌だな・・こんな時になにも会合など開かなくても・・」と思い、一応、リモートでできないのか尋ねたのですが、あっさり却下され、渋々、会合に出かけたのです。しかも、朝から、昼食会まで挟んでの丸一日です。行ってみると、会場には、申し訳程度に、マスクが配布され、入口にはアルコールジェルがおかれた程度で、大した感染対策もなされていません。

会合の内容も、決して、リモートで不可能だとも思われない内容で、しかも、さっさと進めれば、半日で充分な内容をダラダラと雑談や食事をしながら1日中、平常時ならば、時には、普段会わない人と直接会って話をすることは、楽しいことでもあるのですが、今の状況では、とても、そんな気分にはなれません。

参加しているフランス人たちは、一応マスクはしているのに、咳をしたりする肝心な時にマスクをはずしたり、話に熱がこもってくると大声をあげるために、マスクを顎にずらしたり・・その度に、苦々しい思いで、マスクをしている上から、さらに持っていたタオルを口にあてたりしていました。

政府はリモートワークを推奨していますが、それは、全く無視されているのが現状です。案の定、それから数日後に、感染者追跡アプリのアラートが来て、その日に「感染者と近距離で接触しています。ただちにテストを受けてください。ワクチンを受けていない場合は、すぐに隔離してください。」という通知を受け取りました。日頃は、できるだけ外出は控えている私もこれで、アラートを受け取ったのは、年末年始から3回目。しかも、感染者と接触しているという日が、この会合の日にちであったため、注意はしていたものの、1日中の会合・・もしかしたら・・とドキドキしながら、すぐに検査に行きました。薬局には、検査を受ける人の長蛇の列。しかし、幸いなことに結果は陰性でした。

フランス人の衛生観念とモラルの欠如

そして、その会合の長い1日が終わって、ようやく帰途につくと、いつもはあまり乗らない郊外線(パリ郊外で行われた会合だったため)、まだ、ラッシュアワーには、少し早い時間で、ヤレヤレと思いながら電車に乗ると、どこからともなく漂ってくるアンモニア臭、駅の構内ならまだしも、電車の車内です。そういえば、パリのメトロの駅構内(駅にもよりますが・・)もこの匂いが、日常であったことを思い出し、「すっかり日常が戻っている・・」ことをこのアンモニア臭で思い知らされたのでした。日本人にとって、パリには華やかなイメージを持たれている方も多いと思われますが、実際は、「アンモニア臭で日常を思い出す」そんなところでもあるのです。

パンデミックが始まって以来、パリのメトロの車内や、駅は、たびたび、消毒されるようになり、清潔な環境が保たれるようになっていましたが、最近になって、そういえば、駅の清掃や消毒をする人も見かけなくなり、また、もとどおりの不衛生な状態が戻ってきています。

そして、さらに驚いたのは、電車の車内で、ピーナッツを食べながら、ビールを飲んで盛り上がっている人々がいたことです。郊外線とはいえ、さほど長距離の列車ではありません。パリの中心地も通過するごくごく普通の電車です。もちろん、公共交通機関利用の際には、マスク着用は義務化されていますが、このような電車の全てにまで、コントロールをするほど、RATP(パリ交通公団)やSNCF(フランス国鉄)も暇ではありません。なにせ、毎日、感染者が30万人以上増加しているのですから、感染者隔離のために、これらの交通機関も人手不足なのです。

見つからなければかまわない・・と思っているのでしょうが、これでは、ワクチンパスが施行されようとも、不衛生な環境で、規則はあってなきの如し、日本なら、幼稚園児でもできるような基本的な衛生管理ができないのですから、フランスの感染がおさまらないのも当然です。今やフランスの感染者数は堂々、ヨーロッパのチャンピオン、10人に1人は感染していると言われています。

それでも、重症化せずに、ほとんどの人が風邪程度の症状でおさまっていれば、まだ、よいのですが、さすがにこれだけ感染者がいれば、500万人ほどのワクチン未接種者は続々と医療を圧迫し続けているのです。長引くパンデミックと医療体制の逼迫に悲鳴をあげている医療従事者の叫びとして、先日、パリのピティエ・サルペトリエール大学病院名誉教授のアンドレ・グリマルディ氏が新聞に、「ワクチン接種を拒否する成人には、重症になった場合に蘇生を希望するかどうかという事前指示書を書くように体系的にアドバイスするべきではないか?」「ワクチン接種を受けないという自由な選択を主張する人は、蘇生を受けないという自由な選択を前提に一貫性を持たせるべきではないか?」という疑問を投げかける寄稿が物議を醸しました。

集中治療室の病床が足らずに、その度にトリアージュ(命の選別)を強いられる過酷な状況は、想像に難くありません。

しかし、これには、フランス人は大反発。「我々には、ワクチン接種をするかしないかを選択する自由がある!」「我々には、必要な医療を受ける権利がある!」という声が多くあがっています。フランス人お得意の「自由」の主張も、時と場合によっては、結構なことだとは思いますが、最低限、守るべきルールや周囲の人々への尊重が前提であることは言うまでもありません。身勝手と自由は別物です。

しかし、医療状態が逼迫し続けているにもかかわらず、医療体制を変革しない政府にも問題はあると思うのです。そもそも、このような国民を抱えている以上、ワクチンパスポートの施行だけで、フランスでの感染がおさまるとは、あまり期待できないのが正直なところです。

 

Profile

著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



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