パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです
フランスでの環境問題への取り組み 食品廃棄物救済アプリの拡大
ここ1〜2年の世界に共通する最大の差し迫った問題は、コロナウィルスの蔓延というパンデミック対策が最重要で最も緊急に対応していかなければならない問題であったことは言うまでもありません。しかし、パンデミックがなかなか終息しないとはいえ、他の問題もパンデミックが終息するのを待ってくれるわけでもありません。
ことさら、地球温暖化による気候変動から起こる猛暑・洪水などの被害は地球規模で起こっており、放置するわけにはいかない深刻な問題でもあります。
昨年の夏の段階で、フランスでは、カフェやレストランなども感染回避のために、テラス席のみが営業を許可されている状態のタイミングで2021年の冬からカフェのテラス席の暖房が禁止される法令が発令されました。そもそもフランス人はカフェでもレストランでもテラス席が大好きで、車が往来する通りで排気ガスを吸いながらでも、冬の寒い時期でも、テラス席を好み、また、冬の時期、寒い中、カフェのテラス席に置かれた暖房で暖をとりながら、カフェを楽しむ光景はフランスならではの風物詩を感じられる光景でもありました。フランス人にとってのカフェは、フランスの文化の一つであるといっても過言ではありません。なので、これはフランス人にとって、長年、愛し、慣れ親しんだ文化を変えてしまう実は大きな決定でもあったわけです。
そもそも、このテラス席での売り上げが重要な位置を占めるカフェやレストランにとっては、冬の間の暖房なしのテラス席には、大きな痛手を被る可能性が高く、そのための準備期間を考慮して実際に施行される1年前に発表されたこのカフェのテラス席の暖房禁止でしたが、その時は、正直、「まだコロナもおさまっていないのに、今から来年のカフェの暖房についてなんて・・」と感じていました。
しかし、あっという間に1年は過ぎ、ワクチン接種のために感染状況は改善したとはいえ、まだまだ終息には至っていない現在、この1年の間にカフェやレストランはどんな対策を講じていたのか?暖房以前に、長い期間の営業停止により起こってしまった従業員の転職からくる人手不足やヘルスパスという新しいカフェやレストランへのアクセス方法などに対応するのに追われていたと思われます。
その他にも、パンデミック対策でもあった自転車の普及は目覚ましく、フランス人にとって、以前はスポーツやレジャーの一つで休日に郊外に自転車を持って行って乗るものであった自転車が完全に移動手段の一つとなり、今ではパリ中どこへ行ってもベリブ(Velib)というレンタル(乗り捨て可能)自転車が見られるようになりました。それに加えて、今年の8月には、パリ市内の自動車の制限速度は30キロに規制されたりと環境問題への規制はどんどん増えています。
プラスチック包装・食品廃棄物問題
また、プラスチック・食品廃棄物に関する規制もどんどん厳しくなり、スーパーマーケットのレジ袋はかなり前にすでに廃止されていた上に、昨年の冬には、スーパーマーケットで計り売りの際に使われるビニール袋が廃止され、全て紙の袋が使われるようになり、2022年1月からは、野菜や果物のプラスチックの包装が禁止されます。(一部の傷みやすい野菜や果物を除く)
また、マクドナルド・フランスでは、これまでプラスチックボトルで販売されていたミネラルウォーターやスパークリングウォーターの販売を取りやめ、それに代替するものとして、Eau by McDonald's(オー・バイ・マクド)の販売を開始し、それが、水道水を独自に加工したものであることが発覚し、「マクドナルドは水道水を生産コストをはるかに超えた破格の値段で販売している!」「環境問題を傘にきて、過剰な経済利益を得ようとしている!」と大論争を生んだこともありました。
また、食品廃棄物に関しても、昨年末あたりから、政府の推奨で、食品廃棄物防止のために、どこのスーパーマーケットでも賞味期限間近、あるいは賞味期限切れの商品には「アンチガスピヤージュ(無駄防止)」と書かれたオレンジ色や黄色いラベルが貼られた商品が大幅に値下げして販売されるようになり、これまで大量に廃棄されていた食品が市場に出回り始めました。もともと倹約家(ケチとも言う)のフランス人にとって、このアンチガスピヤージュのラベル付けは、大成功、スーパーマーケットのアンチガスピヤージュのコーナーはいつでも人だかりができています。
アンチガスピヤージュのラベルが貼られたコーナー 筆者撮影
「Too Good To Go」食品廃棄物救済アプリの拡大
スーパーマーケットのアンチガスピヤージュの成功を受けて、最近、フランスで急激に拡大し始めたのは、これをアプリで予め(といっても当日・あるいは前日の夜の段階ですが)予約して、廃棄することになる食品を大幅に安い値段で買い物できる「Too Good To Go」(通称トゥグトゥゴ)というシステムです。これには、現在のところ、フランスでは、24,075の加盟店が参加しており、大手のスーパーマーケットをはじめ、レストラン、パン屋さんなどの食料品店が名前を連ねています。
「Too Good To Go」を紹介しているYouTube
このシステムは非常によくできており、当日の売れ残りのこれまでは当然のように廃棄処分にされていた食品を約3分の1の価格で購入することができます。ただ、閉店直前のタイミングでの受け取りのため、引き取りの時間が短時間に限られており、また、中身の食品については、自分で選択することができないため、ある程度、狙いを定めて利用する必要があります。
これを利用するには、まず、その時間帯に引き取りができる地域での店舗を選ぶ必要があり、また、自分が消費できる範囲内での中身であることが納得できる必要があります。
私の場合、試しに近所に店舗のある「PAUL」(パン屋さん)で、定価12ユーロ相当(約1,600円)のものが3.99ユーロ(約520円)と提示されていたものを1セット注文してみました。引き取り時間は閉店間際の15分間に限られているため、当然、他に注文していた人にも数名出くわしました。実際にこのアプリがかなり浸透していることを感じられた瞬間でもありました。「PAUL」であれば、当然、中身はパンかお菓子類と中身は想像の範囲内(これがスーパーマーケットなどだと広範囲にわたるため、いらないものが入っているリスクがあります)、中身も当日の売れ残りですから、問題もありません。その瞬間にも、同じものを定価で購入していく人もいるのです。決済はすでにアプリで注文時に支払ってあるので、その場では引き取りだけで、その短時間に引き渡すために店舗側もその時間には、一人一人の分を用意してあります。
中に何が入っているのかわからないのが、ちょっとしたお楽しみで福袋のようでもあります。しかも、格安の・・。家に帰って、中身を開けて見るのが楽しみで、帰宅と同時にすぐに中身を並べて確認してみると、中には、スモークサーモンのサンドイッチ(5.5€)、モツァレラチーズとトマトのオリーブのバゲットのサンドイッチ(4.7€)、ブレッツェル(1.1€)、オリーブ、ベーコンのフガス(各0.7€)、シューケット、ブリオッシュ、バゲットなどなど、計算してみると、実際には、20ユーロ相当のものが入っていました。支払った金額は、3.99ユーロですから、サンドイッチ1つ分の金額以下なわけです。
いくら何でも、一度には食べきれないので、バゲットなどは、そのまま、少し切り分けて、即、冷凍庫へ。その日の夕飯は、急遽、サンドイッチに・・普段は買ったことがなかったスモークサーモンやモツァレラチーズのサンドイッチなどを思いがけず食べてみることになり、意外とクォリティの高いスモークサーモンがたっぷり入っていることや、オリーブオイルの香りがたまらないモツァレラチーズのサンドイッチなどを安く手に入れたというこの上ないスパイス入りで、美味しく頂いたのでした。これは意外と普段は自分では買うことのなかった商品の宣伝にもなるのではないか?そんなことを思ったりもしたのです。
日本には、このようなアプリがあるのかどうかわかりませんが、24時間、常に食べ物を扱っているコンビニなどは、四六時中、賞味期限・時間に追われ、さぞかしたくさんの食品廃棄物が生まれているだろうことを思えば、日本にもこんなシステムがあったら、さぞかし、食品廃棄物が減るのではないか?と思ったりもしたのでした。
一人一人の日常生活の中での小さな積み重ねから環境問題へ取り組むことが必要ですが、とりあえず、これで食品廃棄物救済に私も貢献できるのではないか?と感じています。
著者プロフィール
- RIKAママ
フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。
ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」
Twitter:@OoieR