パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです
フランスには、ロックダウン以外に感染拡大を抑える道はなかった・・・・
フランスは、コロナウィルス感染第2波が来ても、ギリギリまで、ロックダウンをするつもりではなかったと思います。実際に、2回目のロックダウンが開始される10日前の10月17日(土)からは、感染拡大の深刻な地域のみでの夜21時以降の外出禁止令を発令したばかりで、その効果が表れてくるはずの最低でも、2週間は、様子を見るつもりでいると思われていたからです。
私自身も1回目のロックダウン解除以来のマクロン大統領の経済最優先の強気の姿勢を湛えた口ぶりから、多分、よっぽどのことがない限り、フランスは再びロックダウンをすることはないだろうな・・・・と思っていたのです。
ところが、夜の外出禁止令が始まった時期を前後して、10月の1週目には、2万人に満たなかった一日の感染者数も10月9日に2万人を突破してから、3万人突破、4万人突破、そして、10月25日には、5万2千人を突破、およそ2週間の間に 2.5倍ほどに、膨れ上がり、とても外出禁止令の効果を待つどころではなく、毎日、世界各国の感染者数を見比べていると、もはや、フランスのライバルはアメリカとインドだけで、他のヨーロッパ諸国の追随も許さない、フランスは、堂々としたポジションを固めはじめ、なんなら、アメリカとインドの人口を考えれば、フランスは、いつの間にか、堂々、世界一位の地位を築いていたのです。
つまり、よっぽどのことがフランスに起こり始めていたのです。
ロックダウンの前触れ
あれよあれよという間に感染状況が悪化し始めて、新規感染者数がうなぎ上りになっていく中、当然のように、病院の状態も逼迫し始め、オー・ド・フランス(フランス北部の地域)では、集中治療室に収容しきれなくなった患者がベルギーに運ばれたり、ボルドーなどの他の地域に20名以上が移送されたというニュースが流れ始めました。
今回のフランスのコロナウィルス感染第2波で最も恐れられているのは、その感染状況が、第1波の時とは違って、フランス全土にくまなく広がっていることで、患者の移送できる許容範囲が極めて狭いということです。そして、ついに、コロナウィルスによる一日の死亡者が 500人を突破し、集中治療室の患者数が 3,000を超えた頃、いよいよ、これは、いつロックダウンになってもおかしくない・・・・と多くの国民が思い始めました。
フランスのツイッター上にも#ロックダウン2とか、#ロックダウンシーズン2、などというまるで映画のタイトルのようなハッシュタグ付きの投稿が賑わい始めていました。
その証拠にロックダウンが発表になる前日から、スーパーマーケットは、平日にも関わらず、大混雑。私自身もロックダウンになったら、買い物に行くことはできるものの、少し遠いお店などへは行けないし、近所の買い物でさえも、外出許可証などのダウンロードが必要で、厄介・・・・おまけに入場制限などを行なっているために、いつ買い物に行っても長蛇の列、そんなのはゴメンだ!と思って買い物に行ったのですが、結局のところ、考えていることは皆、同じで、時すでに遅し、その日の買い物も、すでにいつもの倍以上の時間がかかりヘトヘトになって帰ってきたのです。
ロックダウン発表前から買いだめに集まる人々・男性が多いのもフランスの特徴 筆者撮影
そして、とうとう、マクロン大統領から、明日、何らかの発表があるというニュースが流れたのが27日(水)。当初、おそらく金曜日の夜からロックダウンだろうと思われていたのも束の間、ロックダウンは、木曜日の夜からということになりました。それだけ、一日の猶予もない状況であったことがわかります。一日、4万人、5万人と感染者が増えていくのですから、ロックダウンともなれば、一日も早くというのは、当然のことです。
ロックダウンの発表
夜、20時の全国放送に登場したマクロン大統領は、神妙な面持ちで、現在、一日、4〜5万人感染者が出て、一日の死亡者が500人に達するフランスのコロナウィルスの感染状況を説明。そして、病院の集中治療室が国家のキャパシティの半分以上を超えている状況等を説明し、現在の数字から11月の中旬には、9,000人近い患者が集中治療室を埋め尽くすであろうことを示し、第2波は、第1波よりも厳しい状況で恐らく多くの犠牲者が出ることも予想されていることを説明しました。
そして、これまで、私たちは、「ウィルスと共に生きる」をスローガンとして掲げ、あらゆる衛生管理や行動制限措置を取りながら、戦ってきましたが、今までの措置では、十分ではなく、前回のロックダウンから、いくつかの変更を加えた上で、最低でも12月1日まで、フランス全土にわたり、再び、ロックダウンを行うことを発表しました。
経済や社会生活を可能な限り継続するために、あくまでも衛生管理をさらに強化した状態で、幼稚園から高校までの学校は継続(6歳以上はマスク義務化)、工場での仕事、農業、公的行政機関の継続、その他、可能な限りのリモートワーク、レストランはテイクアウト、宅配のみとすること等も同時に発表しました。
しかし、あくまでも、国民の苦痛を慮る言葉も忘れずに、「これまでの措置でさえ、厳しいものであり、多くの苦痛を伴うものであったと思う。しかし、ヨーロッパの他の国々でも感染は、拡大し、オランダやアイルランドでは、フランスよりも早く、より厳しい措置を取っている。ここは、再び、謙虚な気持ちで今回のロックダウンを受け入れて欲しい。多くの人の命を救うことが何よりも最優先です。私たちはすでに第1波を見事に乗り切ってきました。私たちが力を合わせれば、必ず克服できます。私たちはフランスなのだから???」と付け加えました。
第1波以上の悲劇とは?
たしかに、第1波は、2ヶ月近いロックダウンの成果で、感染を抑えることができました。しかも、ロックダウン解除後には、気候が春から夏へ向かう頃、感染が沈静化したのには、気温の恩恵も大きく影響しています。現在は、秋から冬へ向かう時期、気温もこれからどんどん下がり、ウィルスは、さらに活発化していきます。
第1波のロックダウンの際は、時すでに遅しで、病院の飽和状態も現在の第2波によるロックダウンの開始時以上に進んでいました。しかし、現在のフランスの病院の集中治療室の占拠状況は、3月26日と同じ危険な状態です。
当時は、次々と病院に到着するも、収容しきれない患者が廊下にまで並べられ、病院前には、野戦病院のようなテントが貼られ、その野戦病院でさえもあっという間に患者で埋まっていきました。足りなくなる医療物資に、呼吸器は、動物病院のものまでを調達し、潜水用のマスクまでが使用されていました。
輸入されてくるマスクの盗難が相次ぎ、海外から到着したマスクは軍の先導されて、VIP待遇で運ばれていました。
日々、少しでも余裕のある病院へ、多くの重症患者が物々しい装備で、TGVやヘリコプター、軍用機まで使って移送されていきました。
現在のように、感染者のテストも行われていなかったため、感染者数は把握できていませんでしたが、その代わりに毎日毎日発表されるのは、一日の死者数が千人とか2千人とかいう状態、ついには、死体安置所も間に合わなくなり、パリのランジス市場(日本でいう築地?豊洲市場のようなも市場)の一部は、遺体安置所として使われていました。
これ以上の悲劇が第2波では起こると言っているのです。もう想像もつきません。
こんなに悲惨な状況を経験したのだから、何としてもこのような事態に陥ることは避けたいと思うところですが、これだけのことを乗り越えてきたというような妙な自信のようなようなものさえ、感じられるところもあります。
ロックダウン前日、大荒れ模様のフランス
マクロン大統領のロックダウンの発表は、実に3,270万人(フランスの人口は 6,500万人)の人がテレビを視聴していたといい、直後の世論調査では、77%のフランス人がロックダウンに賛成であったことが発表されています。意外と多いこの数字に、たしかにヤバいな・・・・と多くの人が感じていることがわかります。
ロックダウン前日には、当然のことながら、スーパーマーケットや、本屋さんなどは、本格的に駆け込みで、買いだめに走る人で行列ができる状態。しかし、今回は、少し慣れているせいもあり、淡々と買い物をしている様子。
狭いアパートで過ごすよりも、広い実家、セカンドハウスなどで過ごせるように、パリを脱出しようとする人で、道路は最高時ピーク 700 kmの大渋滞、その上、ロックダウン前の駆け込みの一端だったのか? ニースでは、イスラム過激派が教会に押し入りナイフで3人を殺傷するというテロ事件まで起こり、夜には、ロックダウン直前の夜のひと時を楽しむ人がレストランやカフェには、溢れかえり、夕方から夜にかけて、パリ・レパブリック広場では、ロックダウン反対のデモが起こり、デモの一部が暴徒化し、催涙ガスまで用いての大騒ぎになりました。
フランスのロックダウンの前日は、一日のうちに、テロ・デモ・ロックダウンと全てのヤバいことが起こる大荒れの一日となりました。コロナウィルス感染者が一日5万人出る国で、さらにテロによる無差別殺傷事件、全く、なんて恐ろしい国なんだと思ってしまいます。
「ロックダウンには、77%の人が賛成じゃなかったのかい?」と思いましたが、たとえ、ロックダウンに賛成であっても、最後の外食の時間を楽しく過ごしたい・・という人は少なくなく、どうにも、彼らのモラルが理解できません。
結局のところ、禁止されても、そのギリギリまでハメをはずし続ける・・・・それがフランス人なのです。
普通? 一日の猶予もなく、ロックダウンするという感染状況を考えれば、とても楽しく外食などをする気分ではないと思う私は、日本人。フランス人は、ロックダウンになるならば、そのギリギリまで楽しみたいのです。
ボルドーなどは、夜の外出禁止地域からも外れていたため、ロックダウン前夜は、最後のソワレを楽しみ、まさに、新年を待つかのごとく、午前0時のカウントダウンで大盛り上がりのとんでもない状況であったようです。
結局のところ、フランスで感染拡大回避には、ロックダウン以外に道はない
コロナウィルス感染対策に関しては、フランスは、もはや、日本との比較をすること自体がおこがましい、全く違う土俵の上に立っているとしか言いようがありません。詳しい日本の事情はわかりませんが、日本のコロナウィルス感染は、ずいぶん落ち着いている、まさにコロナとの共存を果たしているかのように見えます。しかし、かと言って、日本政府がフランス政府に比べて、格段に素晴らしい対応をしているとも思えません。
ひとえに、この歴然とした差は、国民の意識の違い、モラルの違いに他なりません。日本人の国民性、一般的なモラルの高さ、清潔さ、真面目さ、辛抱強さ、規律の正しさ、健康管理の意識の高さが今の日本をコロナウィルスから守っているのです。私は、今回ほど、日本人のモラルの高さや真面目さを尊いと思ったことはありません。当たり前のように皆がルールを守る日本と違って、フランスでは、ルールと共に、罰則や罰金を設けなければならず、厳重に国民を管理するためには、警察や軍隊までもが出動しなければなりません。
コロナウィルスのための色々な制限やルールが、何のために敷かれているのかは考えずに、あくまで自分の権利を主張し、罰則がなければ、ルールはないも同然なのです。もうコロナウィルス感染が広がり始めてから、8ヶ月も経とうとしているのに、一向に学習しません。
あくまでも人と群れたがり、感染を広げ続ける様子に、この人たちは、バカなんじゃないか?と思うこともしばしばですが、バカというのは、知能ではなく、モラルの問題だなとつくづく思います。スーパーエリート集団のグランドエコールの学生たちの間でも、学生同士のパーティーが行われて、クラスターが発生したりしているのを見るに、この人たちにとってのモラルとは一体、何なのだろうか?と思います。
むしろ、エリートの若い学生ほど、危機意識が低く、自分たちには関係ないと思っているようなところもあるくらいです。
しかし、このような国民性をもつ国民を抱えながら、国民を統率、懐柔できなかったフランス政府の甘さは否めません。此の期に及んで、国民を説得できるのが、悪化の一途を辿る数字のみ、モノ申す国民に常に忖度し続けるフランス政府の無力さがコロナウィルス感染拡大に表れています。
ロックダウン前日の一日の出来事だけを見ても、もうやはりフランスにはロックダウンしか道はなかったんだな・・・・と思うのです。
著者プロフィール
- RIKAママ
フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。
ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」
Twitter:@OoieR