World Voice

アルゼンチンと、タンゴな人々

西原なつき|アルゼンチン

アルゼンチンで学んだ「人間力」とは?



この国の人々が作る社会は、国際的に見ると批判や心配されることばかりかもしれません。しかし10年近く暮らしてみて、数々の散々な目(?)にも遭ってきても尚、何か惹きつける魅力がある国なのです。大自然や、アート活動の豊かさなどもありますが、私はこの国の魅力のひとつは「人」の中にあると思っています。



国から出ていった人たちはこぞって、「アルゼンチンの人のあたたかさはアルゼンチンにしかない」と言います。アルゼンチンが嫌になって外国に暮らしてみたものの、慣れ親しんだ「人のあたたかさ」が恋しくなって自国に帰って来る人も少なくないのです。



私の考える、アルゼンチン人の持つ人間力は、 "共感力(Empatia)"と"愛情深さ(Cariño)"、だと思っています。



例えば、先日体調を崩してしまったときのこと。

たいした事ではなかったのですが、パートナーは仕事の都合を付けて看病に来てくれ、友人、仕事仲間、沢山の人が私が"治ったよ"と言うまで、毎日のように、今日はどうか?必要なものはないか?医者には行ったか?など、頻繁に連絡をくれます。

体調不良に限らず困った時、ただ話を聞いてくれるだけの人もいれば、世話を焼いてくれて熱心にアドバイスなどをくれる人もいます。話したいときは話を聞くからね、何でも困ったら言ってね、助けが必要なら連絡してね、というシンプルなメッセージですが、気にかけてくれる人がいるというのはとても心強いものです。

同じように最近、外国人の友人がアルゼンチン短期滞在中に体調を崩してしまった時のことを振り返り、「こんなに周りの人が心配してくれて、助けてくれて、人生の中でこんなに沢山の愛を受け取ったことはない。次にアルゼンチンに来るときにはもらった愛を返したい。」と言って帰国していったことも印象深いことのひとつです。



iStock-1313080991.jpg(Photo: iStock-kazuma seki)




また、こちらの動画は最近ツイッターで話題になっていた、アルゼンチンが凝縮されているような、日曜日の1シーンです。人が集まる広場で子供が迷子になってしまい、ロックバンドが「エドゥアルド!ファンクルス(息子)を探しに来~い!!」と歌い続けて、無事にエドゥアルド父さんが見つかった・・・というもの。

(どうして迷子になったのかはわかりませんが、お父さん、しっかりして!というところも含めてアルゼンチンです。)



感動することがあれば一緒に感動してくれる、悪いことも良いことも、その場限りだとしても、反射的に自分事のように感情移入してくれる。喜怒哀楽が豊かで、人間らしい感情を表現するのが上手な人たちが多いとも言えるかもしれません。

家族・恋人同士、友人同士でも日常的に「好きだよ」「あなたが恋しいよ」など、挨拶がてらに愛情や好意を表現しあうことも普通です。


Profile

著者プロフィール
西原なつき

バンドネオン奏者。"悪魔の楽器"と呼ばれるその独特の音色に、雷に打たれたような衝撃を受け22歳で楽器を始める。2年後の2014年よりブエノスアイレス在住。同市立タンゴ学校オーケストラを卒業後、タンゴショーや様々なプロジェクトでの演奏、また作編曲家としても活動する。現地でも珍しいバンドネオン弾き語りにも挑戦するなど、アルゼンチンタンゴの真髄に近づくべく、修行中。

Webサイト:Mi bandoneon y yo

Instagram :@natsuki_nishihara

Twitter:@bandoneona

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