アルゼンチンと、タンゴな人々
アルゼンチンロック界の父、チャーリー・ガルシアの名曲「ディノサウルス」に込められた想い
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2008年のRolling stone誌のインタビューでチャーリーはこのように語っています。
「先に言っておく。こういうとファシストのように聞こえるが、それは全く違う。あの軍政が敵であったことは明確だ。しかし、あの時代の方がアートは良かった。アルゼンチンのロックは良くなる一方だった。
今は誰もロックと言えるものを弾いていないように見える。今世の中で起こっていることとも関係なく、面白い思想も持っていない。あの頃のロックは何を言いたいかが重要だった。」
考えさせられるコメントですが、彼らが過ごした苦しみの時代に比べたら、今この国で生きる私たちはそれほどの「叫び」が生まれない生活が送れているのでしょう。
そこから生まれる作品がどんなものかは別として、今ここで私たちは表現の自由を奪われることなく作品を作り続けることができています。そしてそれは当たり前であるべきことであり、それが脅かされている国が存在していることに胸が痛みます。
抑圧や苦しみの時代に生み出された音楽は、人の心に特別に響き、その背景を知るとよりその味わいは増します。
時代の声を残し続けた、国民的ロックスター、チャーリー・ガルシア。
ロック・ナシオナルの名曲たちを紐解いてみると、アルゼンチンの歴史が残酷なほど色鮮やかに見えてくるのです。
著者プロフィール
- 西原なつき
バンドネオン奏者。"悪魔の楽器"と呼ばれるその独特の音色に、雷に打たれたような衝撃を受け22歳で楽器を始める。2年後の2014年よりブエノスアイレス在住。同市立タンゴ学校オーケストラを卒業後、タンゴショーや様々なプロジェクトでの演奏、また作編曲家としても活動する。現地でも珍しいバンドネオン弾き語りにも挑戦するなど、アルゼンチンタンゴの真髄に近づくべく、修行中。
Webサイト:Mi bandoneon y yo
Instagram :@natsuki_nishihara
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