パスタな国の人々
世界垂涎のピエモンテ産白トリュフの季節。日本人唯一のトリュフハンター・富松さんの苦悩
イタリアでは トリュフを販売する際、ハンター免許をもとにロットナンバーと収穫産地を取引書類に記載しな ければならないが、日本での販売には産地表記義務がない。だから偽った産地を勝手に名乗る、そんな業者が後を絶たないというわけだ。ただし産地表記義務のない日本であっても、偽った収穫産地を 表記した場合には商品表示法違反にはなる。
「解禁される期間というのは、つまりその時期が、ピエモンテ産の白トリュフのクオリティが最大限に発揮される、旬を迎える時期だということです。解禁期以前に乱獲をすると、白トリュフの育成量が減ってしまったり、クオリティが下がってしまうのです」
より美味しくするために、夏の白トリュフは収穫しないという法律
富松さん曰く、実は白トリュフは夏と秋の2回、土の中で育ち、熟成期を迎えるのだという。つまり夏にもあるということだ。だが夏に育つトリュフは、取らずに土の中に放置し、育成サイクルを終わらせる(土に還す)べし、取ってはならないとイタリアの法律で決められている。そうすることで地中にトリュフの菌糸が増え、それを食べる小動物によって違う場所に運ばれるなどして、秋に育つトリュフの量もクオリティもより豊かになるからだそうだ。
そういうことを知らずに、または知っていても無視して、夏の白トリュフを取ってしまう輩がいる。それを売る輩がいる。そしてそれを買い「当店だけが特別ルートで早く入手しました」と調理する輩がいる。そういう人々のせいで、トリュフの本当の美味しさが味わえないようになり、マーケットが壊されていくんです、と富松さんは憤る。
「毎年世界中で日本だけなんです、夏に白トリュフが出回るのって。おかしくないですか?? 食材に対してもお客さまに対してもリスペクトがないんです」。
著者プロフィール
- 宮本さやか
1996年よりイタリア・トリノ在住フードライター・料理家。イタリアと日本の食を取り巻く情報や文化を、「普通の人」の視点から発信。ブログ「ピエモンテのしあわせマダミン2」でのコロナ現地ルポは大好評を博した。現在は同ブログにて「トリノよいとこ一度はおいで」など連載中。