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パスタな国の人々

宮本さやか|イタリア

世界垂涎のピエモンテ産白トリュフの季節。日本人唯一のトリュフハンター・富松さんの苦悩


そもそもトリュフとは?

トリュフとは、「地下に生息する子嚢菌子実体のことで、主にセイヨウショウロ(Tuber)属の多くの種のうちの1つである」とウィキペディアには書かれているが、簡単に言えば、キノコと同じように胞子を介してある種の木の根に寄生し、地下にできる小さな塊のことだ。それをスライスするなどして料理に添え、その香り、風味を楽しむ。

黒、白、サマートリュフなど、様々な種類がヨーロッパ大陸に約30種類あると言われていて、フランス料理で使われる黒トリュフが有名だが、近年はイタリア産のトリュフにも人気が集まっている。特に白トリュフは生を料理に削りかけて香りを楽しむのが身上で、その香りの素晴らしさは昔から世界のグルメを唸らせてきた。白と言っても、外見はじゃがいもにも似た、うっすらと茶色がかった白で、中はもう少し色の濃いベージュといったところ。北イタリアはピエモンテ州でとれる白トリュフが、特に上質であると世界的に評価が高いが、育成の科学が未だ完全に解明されていないから人工栽培もできない。そして土の中から掘り出したら、1週間から10日ほどで香りは失われ萎んでいってしまうのに、生で食べてこそ真価が発揮されるときている。つまり加熱して寿命を伸ばす作戦は使えないというわけだ。だから旬の時期にしか食べられない希少な存在として、シーズンの10月から12月には、本場のピエモンテ州に世界中からグルメたちが集まってくるのだ。

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ピエモンテ州アルバで毎年秋に開催される「白トリュフ祭」では、ハンターが自分で採ってきたトリュフを直接販売してくれる(2019年著者撮影)。

高級レストランでのトリュフ尽しのコースから、庶民的なトラットリアで郷土料理と合わせた一皿など、みんながそれぞれに味わって楽しむ。一般的に1キロ3000−4000ユーロ程度が相場と言われるが、薄く削った白トリュフは、一皿分で5~6グラム程度。それで50ユーロ前後の値段が料理代金にプラスされる高級品だ。

目玉焼き&白トリュフ

一方地元の人々は、トリュフを扱う人から直接買うなどして、自宅で味わうという贅沢が許されている。ピエモンテ州に26年暮らす私も、毎年シーズンになると機会を見つけては50g程度の小さな塊を買って、目玉焼きに削りかけて食べる。この時ばかりは目玉焼きは絶対醤油でしょう!派の私も、塩をパラパラっと卵とトリュフの部分にふりかけていただく。卵料理ととても相性がいいと言われているトリュフの、ベストかつシンプルな食べ方だと思う。卵と白トリュフはよくあうから、昔ピエモンテをご案内した吉兆の徳岡料理長は、大きな塊を買って帰られ、嵐山のお店で茶碗蒸しに添えて出されたとか。邪道だと怒られそうだが、私も日本人の友人たちと鍋をした後の卵雑炊に白トリュフをやってみたら、めちゃめちゃ美味しかった。という具合に、50gの小さな塊が1万円越えというのは高価だけれど、目玉焼きなどにたっぷり削りかけて4、5人で楽しめるから、年に一度の許される範囲の贅沢だ。

Profile

著者プロフィール
宮本さやか

1996年よりイタリア・トリノ在住フードライター・料理家。イタリアと日本の食を取り巻く情報や文化を、「普通の人」の視点から発信。ブログ「ピエモンテのしあわせマダミン2」でのコロナ現地ルポは大好評を博した。現在は同ブログにて「トリノよいとこ一度はおいで」など連載中。

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