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スペインあれこれつまみ食い

松尾彩香|スペイン

スペインサッカーの差別問題、久保建英も標的に

©️YouTube - 久保建英ベストプレイ集 スキル・ゴール・アシスト

2025年1月19日、スペイン・ラ・リーガの試合で、レアル・ソシエダの日本代表MF久保建英選手が一部の観客から人種差別的な発言を受けるという事件が発生しました。舞台となったのは、バレンシアCFの本拠地メスタージャ・スタジアムです。この問題はサッカー界における人種差別の根深さを改めて浮き彫りにしました。

試合中、ベンチにいた久保選手をはじめ、チームメイトのアンデル・バレネチェア選手、ミケル・オヤルサバル選手らが観客席から侮辱的な言葉を浴びました。レアル・ソシエダが公開した映像によると、久保選手に対して「中国人、目を開けろ!お前は中国人だ!」といった差別的な発言が行われていたことが確認されています。また、バレネチェア選手には同性愛差別的な中傷、オヤルサバル選手には「テロリスト」などの政治的な誹謗中傷が飛び交ったことも明らかになりました。

この事件を受けて、レアル・ソシエダは試合終了後にラ・リーガへ正式に抗議を申し立てました。クラブは公式声明の中で、「サッカーやスポーツの世界において、敬意を欠き、侮辱し、憎悪を煽るような行為は決して許されるべきではない」と厳しく非難しました。さらに、ラ・リーガやスペインサッカー連盟(RFEF)に対して、スタジアムにおける人種差別的な行為の撲滅に向けたさらなる対策を求めました。

一方、バレンシアCFも事件を重く受け止め、公式声明を発表しました。「このような行為は、クラブの価値観を代表するものではない」と明言し、関係当局と協力して加害者を特定し、厳格な処分を下すことを約束しました。バレンシアCFはスタジアムの防犯カメラ映像を徹底的に調査し、問題の発言を行った観客2名を特定しました。

 

加害者の特定と処分

バレンシアCFの協力のもと、スペイン政府の暴力防止委員会(Comisión Antiviolencia)は、久保選手とバレネチェア選手に対して差別的な発言を行った2名の観客を特定しました。調査は、スタジアムの200以上の固定・移動式カメラの映像を精査し、クラブ側と国家スポーツ事務局(OND)の支援を受けながら進められました。

問題の2名には、スペインのスポーツに関する暴力・人種差別・外国人排斥・不寛容防止規則に基づき、4,000ユーロ(約65万円)の罰金および1年間のスタジアム入場禁止処分が科されることが発表されました。映像解析では、久保選手に向けて「中国人、目を開けろ!」と叫ぶ人物と、バレネチェア選手に対して「くそテロリストが!爆弾を仕掛けてこい!頭に爆弾仕掛けられてふっとんじまえ!」と罵る人物が特定されました。

映像解析では、クラブの公式映像と防犯カメラ映像を音声と同期させる作業が行われ、特定作業には数日を要しました。スタジアムの防犯カメラは映像のみを記録するため、音声と正確に照合するための精密な分析が必要だったと報告されています。

バレンシアCFは、処分が確定次第、クラブの規則に基づいて両者をメスタージャ・スタジアムから永久追放する方針を発表しました。対象者がクラブのシーズンチケット保持者である可能性が高いため、クラブはその特権を剥奪する措置を講じる予定です。

 

スペインサッカーファンによる差別的暴言の問題

スペインサッカー界では、近年、ファンによる人種差別的な暴言が問題視されています。特にスタジアムでの過激な発言が度々報告されており、選手やクラブ関係者に大きな影響を与えています。例えば、レアル・マドリードのヴィニシウス・ジュニオール選手は度重なる差別発言を受け、そのたびにクラブやリーグが対策を講じる必要に迫られました。こうした暴言は選手のメンタルヘルスにも悪影響を及ぼし、競技の公平性を損なう要因となっています。

ラ・リーガはこれらの問題に対応するため、スタジアムでの差別的行為に対する罰則を強化し、違反者には試合観戦の禁止処分を科すなどの措置を講じています。しかし、根本的な解決には至っておらず、多くの選手が試合中に侮辱を受ける状況が続いています。今後、より厳格な制裁や啓発活動が求められるとともに、ファンの意識改革も重要な課題となっています。

今回の事件を受け、スペイン国内では再びサッカー界の差別問題に関する議論が活発化しています。ラ・リーガ側は、今後さらに厳格なルールを設けることを検討しており、再発防止に向けた具体的な対策が求められています。レアル・ソシエダのファンをはじめ、多くのサッカーファンが「スポーツの場はすべての人にとって安全で公平であるべきだ」との声を上げており、今後の対応に注目が集まっています。

 

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

2015年スペイン巡礼(カミノデサンティアゴ)フランス人の道を完歩。スペイン語習得のために渡ったコロンビアでコーヒー農家になるもスペイン移住の夢が捨てられず、現在はコロンビアのコーヒー事業を継続しながらマドリードのベッドタウンでひっそりとスペインライフを満喫中。

Twitter: @maon_maon_maon

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