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平野美紀|オーストラリア

オーストラリアに春を告げる花「ワトル」が欧州で「ミモザ」になった話

太陽を思わせる鮮やかな黄色い房状の花は、春の訪れを告げる花として地元民に愛されている。(Credit:Neydtstock -iStock)

日に日に暖かくなり、春本番を迎えたシドニー。オーストラリア南東部に春の到来を告げる花は、「ワトル」という小さな黄色い花だ。

南半球であるオーストラリアでは、暦上の「春」は9月からとなり、春を迎えた最初の日である9月1日は、ワトルの開花を祝う「ナショナル・ワトル・デー」となっている。(参照

ワトルは、オーストラリア固有の植物で1,000以上もの種がある。

その中のひとつ、「ゴールデン・ワトル」は、オーストラリアの国花にもなっており、ナショナル・カラーである「グリーン&ゴールド」は、このゴールデン・ワトルの葉のグリーンと花の太陽のように輝く黄色=ゴールデン・イエローからとったものだ。

国章や紙幣にもあしらわれ、国民から愛されるオーストラリアの固有種「ワトル」。(参照

だが、この花を見て、イタリアやフランスなどで親しまれている花「ミモザ」とそっくりであると思った人もいるのではないだろうか?

国際女性デーのシンボルになっている黄色い花「ミモザ」

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国連「国際女性デー」のシンボルにもなっているミモザ。(Credit:Galina Burgart -iStock)

毎年3月8日は「国際女性デー」として知られるが、イタリアでは「ミモザ」を贈り合う習慣があり、「ミモザの日」とも呼ばれているという。(参照

女性の権利と平等を求めた運動のシンボルとして、ミモザの花が選ばれたのは1946年のことだそうだが、なぜこの花が選ばれたのかについては、いくつかの理由があるようだ。

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2月の末頃、満開となったミモザがイタリアの歴史的な街並みを黄色く染める。(Credit:ROMAOSLO -iStock)

ひとつには、まだ寒さが残るイタリアの3月に満開になる数少ない植物のひとつであり、イタリアで多く育てられ、比較的安価で入手しやすいこと。また、花のひとつひとつは小さくて壊れやすそうに見えるが、実は悪条件にも耐えられる強い植物であることから、女性が強く反映できる世界を目標を掲げる「国際女性デー」のシンボルとしてふさわしかったという見方もあるそうだ。(参照

では、イタリアで繁栄し、地位を築いているミモザとオーストラリアの固有種ワトルは、どういう関係なのだろうか?

海を渡って勘違いされた「ワトル」

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オーストラリアの春である8月末頃~9月にかけて満開となる野生のワトル。(シドニー郊外にて、筆者撮影)

イタリアやフランスで「ミモザ」と呼ばれる黄色い花は、正式には「シルバー・ワトル」と呼ばれる植物で、日本では「フサアカシア」として知られる。

シルバー・ワトルは、冒頭で紹介した1,000種以上あるオーストラリアの固有種「ワトル」の1種だ。

オーストラリア南東部のニューサウスウェールズ州、ビクトリア州、タスマニア州、オーストラリア首都特別地域が原産のこの植物は、1780年代にオーストラリアから持ち出され、英国のキュー王立植物園で育てられたという。

その後、1830年から1850年にかけてイタリアの地中海沿岸部に別荘を建て始めた英国人が、この地域に持ち込んで植えたのがきっかけとなり、リヴィエラ地方と呼ばれる地中海沿岸地域に定着した。(参照

つまり、ワトルとミモザは同じものなのだ。

しかし、なぜ、「ミモザ」と呼ばれるようになったのだろうか?

「ミモザ」とは本来、ネムノキ科の植物のことを指す。オジギソウなどのネムノキ科の植物は、ワトルがヨーロッパへ渡る以前から彼の地に定着していたことから、似た形状のワトルを「ミモザ」と呼んだのが始まり...というのが通説となっているようだ。

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本来の「ミモザ」であるネムノキの花や葉の形は、どこかワトルと似ている。(Credit:banedeki -iStock)

こうして、オーストラリアの痩せた土地でもたくましく育つ「ワトル」は、ヨーロッパへ渡り、「ミモザ」となった。その香りは、有名高級ブランドの香水にも使われるほど人気だ。

太陽のように輝かしいゴールデン・イエローの花が咲きだす季節、それは、ヨーロッパの人々にとって、寒くて暗い冬の終わりを告げる待ちに待った季節に違いない。南フランスには、「ミモザ街道」と呼ばれる道があり、「ミモザ祭り」も開催されるほど、彼の地でも地元民に愛されている。(参照

南フランス「ミモザ街道」の紹介動画。(Sainte-Maxime Tourisme Officiel)

花言葉には、優雅・友情・感謝など、前向きなものが多く、「幸せ」を象徴する花として、愛する人へ贈られるという「ミモザ」こと、「ワトル」。(参照

名前を間違って呼ばれてしまったとはいえ、原産地のオーストラリアから遠く離れた国々で、これほどまで親しまれている植物は、他にはないのではないだろうか。なんとも「幸せ」な植物である。〈了〉

※次回では、間違った名前で呼ばれることになってしまったワトルに新たな苦難・・・?調査研究が進んだ結果、またまた面倒な問題に直面しているワトルの現状を取り上げます。>>9/23 公開しました!「ミモザに間違われた「ワトル」をめぐる世界最大の植物学論争 ─ DNA分析でわかった不都合な真実」

 

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著者プロフィール
平野美紀

6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。

Twitter:@mikihirano

個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/

メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/

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