今年３月にCNN travelが発表した「料理が美味しい国ランキング」で４位に選ばれたスペイン。スペイン料理は日本人の口にも合うと言われており、パエリアやアヒージョはスペイン料理の中でも日本人にもよく知られている代表格なのではないでしょうか。

もう一つ、スペイン料理の中でよく知られているスパニッシュオムレツ（トルティージャデパタタ）。実はスペインでは、長い間このスパニッシュオムレツに玉ねぎを入れるか入れないかで意見が分かれ度々論争が起こるのですが、最近スペインの社会学研究センター(CIS)が発表したスパニッシュオムレツに関する調査結果がこの論争に終止符を打ったと話題になっています。

玉ねぎ有り派が大半

この社会学研究センターが発表したレポートでは、食や旅に関する様々なアンケートの結果を見ることができるのですが、中でも国民の注目を最も集めてるのがこのスパニッシュオムレツに玉ねぎを入れるかどうかの「玉ねぎ論争」。各メディアがこぞって報じるほどスペイン人の関心が高いこの論争ですが、この調査結果によると玉ねぎ有り派が７０,４%で玉ねぎなし派の２０,９%を大きく上回る結果となりました。

ちなみに日本のレシピサイトで紹介されているスパニッシュ風オムレツの材料には、チーズやハム、ピーマンなど様々な具材が含まれていることも少なくありませんが、本場のスパニッシュオムレツは基本的に卵とじゃがいも（＋玉ねぎ）をオリーブオイルで調理し塩で味付けするだけのとてもシンプルな料理。シンプルと言っても各家庭や各バーでそれぞれこだわりがあり、美味しいスパニッシュオムレツが食べられるレストランはどこかという話題が日々の会話の中でされるほどスパニッシュオムレツはスペイン人にとても愛されている料理なのです。

さて、スパニッシュオムレツの議論は玉ねぎだけにとどまりません。社会学研究センターはさらに「スパニッシュオムレツは半熟派か、しっかり火を通したい派か」という、スペイン人の間でよく交わされるもう一つの論争についても調査を行っています。結果は半熟派が５３,９%と約半数なのに対し、２６,９%がしっかり火を通したい派とのこと。さらに年齢別に見ていくと、年齢が高ければ高いほどしっかり火を通したい派の人が多いということが分かりました。

食糧難を支えた料理だったはずなのに・・・

スパニッシュオムレツの歴史は１８世紀まで遡ります。当時スペインでは王位継承をめぐるカルリスタ戦争の真っ最中でした。戦争の影響で食糧難に陥り、それまで食べられていた卵だけで作ったオムレツだけでは空腹が満たされなくなった市民らは、卵にじゃがいもと玉ねぎを入れてかさ増しをしお腹を満たすようになりました。それがスパニッシュオムレツの誕生だと言われています。（諸説あります）

そんな手軽にできる家庭料理であったはずのスパニッシュオムレツですが、現在インフレの影響を受けて材料費がどんどん値上がりを続けています。先日、地元メディアDiario ABCが同紙のインスタグラムで興味深い動画を掲載しました。その動画はスパニッシュオムレツに必要な材料をスーパーマーケットに買いに行き、合計金額を去年と比較するというもの。この動画によると、以前のブログで紹介したようにオリーブオイルは去年よりも５０％以上の値上がりが行われているほか、卵１２，３％、じゃがいも１８％、玉ねぎ１０％、塩１１％と全ての材料に１０％以上の値上がりが確認され、材料費の合計は１６ユーロと去年の１１ユーロから５２％も値上げしていることが分かったのです。

どっち派論争は世界共通

スペインに来て実際によく耳にしていたこのスパニッシュオムレツの玉ねぎ論争（個人的には玉ねぎなしの半熟派）。食べ物の具材ひとつでよくこんなに盛り上がれるなぁと思っていましたが、よく考えると日本にも「卵焼きは甘い派かしょっぱい派か」「こしあん派かつぶあん派か」「たい焼きは頭からか尻尾からか」などなど挙げていたらキリがないほど似たような話題で盛り上がっていることを思い出しました。言葉や文化は違えどやはり同じ人間。みな自身のこだわりは譲れないものなんですね。