昨年からコーヒーの価格高騰に伴い、日本でも大手企業がコーヒーの価格改定や内容量の見直しなどを余儀なくされています。

消費国に大打撃を与えているこのコーヒーの価格高騰ですが、一方長い間価格の低迷で厳しい暮らしを強いられてきたコロンビアの生産者や国にとってはとても明るいニュースとなりました。

前回の記録的な価格の上昇が起こってから約2ヶ月。価格の大きな上がり下がりもなくそろそろ価格が下落していくだろうと誰もが思っていた矢先、突如グッと価格が上昇し再びコロンビアのニュースに「新記録」の文字が踊っています。

2011年以来の高値

9日、コロンビア国内の125kg当たりのコーヒーの価格は2.307.000ペソ(67,812円現在)と歴代最高値を記録しました。更にニューヨーク市場のアラビカ種は１ポンド当たり2,58ドルをたたき出し、これは2011年9月以来最高値となっています。

コロンビアコーヒー生産者連合会のロベルト・ベレス代表は「これは生産地と生産者にとってとてもいいニュースだ」とコメント。この価格の上昇は国内に54万世帯もいる生産者たちの収入を増やし、その生産者たちが地元で消費をすることによってコーヒー生産地の経済を回すことにも繋がるのです。

また日本のような消費国にコーヒーを輸出することによってコロンビアの国全体の経済にもプラスの効果をもたらすので、この価格高騰によって国や生産者が大儲けしているように感じるかもしれません。しかし現実はそう甘くはないようです。

La carga de 125 kilogramos del grano alcanzó un valor de $2′307.000 en el país, mientras que en la bolsa de Nueva York cerró en US$2,58 por libra. https://t.co/sWrHYg5LOL vía @elespectador #PrecioDelCafé

-- Federación Nacional de Cafeteros (@FedeCafeteros) February 10, 2022

伸び悩む収穫量

コロンビア政府としてはコーヒーが高値で売れる今、より多くのコーヒーを海外に輸出してたくさんの利益を得たいと考えているわけですが、ラニーニャ現象による長雨の影響で生産量が思うように増えずコーヒー産業は苦戦を強いられています。

コロンビアでのコーヒー栽培面積は84万ヘクタールとされており年間1450万袋(60kg/袋)の生産量を見込めるにもかかわらず、天候の影響で昨年2021年の生産量は1230万袋と前年比11％ダウンという結果に終わりました。更に今年1月の生産量は86万8千袋と前年同期の20％も低い生産量にとどまっており、このまま天候が回復しなければ今年全体の生産量は更に減少してしまう可能性は十分にあると言えるでしょう。

コーヒー価格に留まらない値上げラッシュ　

コーヒーの価格が上がり生産者の収入が増えることは良いことですが、それと同時にコロンビアでは生活に関わるものが次々と値上げしています。

日本の報道でも「食糧品の値上げラッシュ！」という言葉をよく目にしますが、コロンビアでも同様の値上げラッシュが起こっており、地元紙el COLOMBIANOの記事によるとコロンビア料理に欠かせないジャガイモは111％の値上げ、肉類は33％、フルーツは24％の値上げが報じられています。

この価格高騰の要因の大きな一つは肥料は飼料の価格高騰で、これはコーヒー生産者にも大きな影響を与えています。それに加えて人件費、交通費、ガス代など生活に関わる様々なものが今年に入って一気に値上げを行いました。

コーヒー生産者たちはコーヒーの価格高騰で収入は増えたものの、肥料や人件費の上昇により多くの生産コストがかかる上に、そのコーヒーを売りに村まで持っていく運搬コストも増加。更には食糧品や日用品の値上げにより生きていくためにかかるコストも大幅に増えており、コーヒーの価格高騰を手放しに喜べないのが現実のようです。

更に問題なのは、今後コーヒー生産大国ブラジルの生産量が回復していき、数年後にコーヒーの価格が暴落することはほぼ確実ということ。コーヒーの市場価格が暴落しても一度上がったこれらの値段は元には戻りません。我々コーヒー生産者は価格高騰によって収入が上がることに安堵しながらも、次にくる価格暴落によって生活が今まで以上に苦しくなることに怯えながら生活しているのが現状なのです。