World Voice

日本人コーヒー生産者が語るコロンビア

松尾彩香|コロンビア

再び値上げのコーヒー豆価格 波に乗るコロンビアコーヒーと課題

©️YouTube - Are you buying the right Coffee Beans? (Beginner's Guide to Coffee)

パンデミック以降、世界各地で起こっている物価の高騰。2022年にこれまでにないほどの高値を叩き出したコーヒー豆は、現在はピーク時より少し落ち着いたものの依然としてに高値をキープしたままです。円安もありコーヒー豆を手軽な値段で入手できないことから、カフェや喫茶店では倒産が相次いでいるという噂も耳にしました。また物価の上昇で人々の生活が厳しくなったことで、お店で500円のコーヒーを飲むよりコンビニの100円のコーヒーで我慢する、という消費者も少なくない様です。

消費国にとって頭が痛い値上がりですが、生産国にとってはコーヒー豆の値上がりはうれしいニュース。コーヒーの生産量世界3位、品質は世界1位と言われているコロンビアは好調の波に乗っているようです。

  

上下するコーヒー価格

2022年コーヒー産業に衝撃を与えるほどの高値を叩き出したコーヒー豆の市場価格。その後価格は下降を続けましたが、今年の4月ごろにコーヒー生産量世界2位のベトナムの不作の影響で再び値が上がりました。この高値が1ヶ月ごろ続いた後、価格は一瞬落ち着いたかの様に見えましたが、夏にはいって4月の価格上昇を上回るほどの高値を記録しはじめたのです。コロンビアでは125kgあたりのコーヒー買取価格が毎日発表されますが、その発表によると最近では125kgあたり200万ペソ(約7万円)の大台に乗るか乗らないかの境目を毎日うろうろしているような状態。私がコーヒー生産者となった2018年は80万ペソ(約2万8千円)程度で買取されていたことを考えると、かなりの高値が続いていることが分かります。

newsweekjp_20240827185252.png

©️YouTube - Are you buying the right Coffee Beans? (Beginner's Guide to Coffee)

今回の高値の原因は

コーヒー豆は先物取引で価格が決められていますが、価格の動きに関係するのは需要と供給のバランスだけに限りません。コーヒーを投資物件として取引に参加している人らは短期的な将来の予想で売買を行うため、実際に生産量や需要に変化がなくても売り買いがなされ価格が大きく変動することもあります。

今回のコーヒー価格の上昇の理由は「ブラジルに再び霜が降り、生産量が大幅に落ち込むと予想されているからだ」と言われています。最近一部のブラジルの生産地で霜が降りたことが確認され雨不足も報告されていることから、2022年の様な降霜による生産量の激減が起こるのではないかと投資家の間で心配されている様なのです。降霜と水不足への不安の声は日に日に高まっており、今後さらにコーヒー価格が値上がりする可能性も否定できません。

newsweekjp_20240827185157.png

©️YouTube - Are you buying the right Coffee Beans? (Beginner's Guide to Coffee)

 

生産量増加

不作が心配されるブラジルとは打って変わり、コロンビアの生産量は増加の一途を辿っています。コロンビアコーヒー生産者連合会ヘルマン・バーモン代表によると、2024年第二四半期の生産量は304万袋と前年同時期より30%も増加しました。さらに増加したのは生産量に限らず、この収穫による利益が前年の26億8千ペソから29億8千ペソと増加し、生産者らにも大きな利益をもたらしたとされているのです。生産者らの利益が増えたということはコーヒーが生産される農村地の経済も活性化されるということで、バーモン代表は「コーヒーは輸出製品であるだけでなく、生産地の希望と発展の代名詞である。」とこの成果を喜びました。

 

ヨーロッパのノルマをクリアできるか?

絶好調なコロンビアに現在立ちはだかる壁はヨーロッパ連合が定めたグリーン協定。この協定では近年問題になっている森林伐採問題にも焦点が置かれ、森林伐採が多く行われている地域からの輸入品には輸入条件が敷かれることになりました。コロンビアはこの対象地域として指定されているため、コーヒーをヨーロッパに輸出する際にその条件をクリアすることが求められます。

ヨーロッパに輸出されるためには森林破壊が行われたとされる場所で生産されたものでないこと、森林を劣化させることなく栽培されていることが条件となり、さらにこのグリーン協定には農薬の使用やパッケージについても言及されています。コロンビアコーヒー生産者連合会のバーモン代表は、このグリーン協定に適応するための重大な一歩として輸出者向けの地理情報を照合できるシステムを準備していることを発表しました。これは輸出されるコーヒーが森林伐採に関連していないことを示すための有効のツールになるとのことです。

ドイツ、ベルギーなどのヨーロッパ諸国はコロンビアコーヒーの主な輸出先。大切なお客さんを失わないためにも、コロンビアはこういった一方的な要求に地道に応えていくしかないようです。

 

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。2022年7月よりスペイン在住

ブログ: http://campesinita.com

Twitter: @maon_maon_maon

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

Ranking

アクセスランキング

Twitter

ツイッター

Facebook

フェイスブック

Topics

お知らせ