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日本人コーヒー生産者が語るコロンビア

松尾彩香|コロンビア

コロンビアの児童婚廃止、法制化へ大きな前進

©︎Pixabay - sasint

コロンビアで児童婚を禁止する法案が上院で承認され、歴史的な一歩を踏み出しています。コロンビアではこれまで8回も児童婚禁止の法案が持ち出されましたが、いずれも承認には至りませんでした。しかし9回目となる今回の挑戦で、ついに実現に向けて大きく前進したのです。今後は下院で可決された法案との調整を経て、大統領の署名により法律として正式に成立する見通しとなっています。

 

婚姻最低年齢の引き上げ

ユニセフの2022年報告書「コロンビアにおける児童婚と早期結婚の状況分析」によれば、コロンビアは15歳未満の少女の結婚で世界20位、18歳未満では世界11位という深刻な状況にあります。この法案の成立により、1887年から続いていた14歳以上の未成年者の結婚を認める制度が、137年の時を経てついに廃止されることになります。

法案提出者の一人であるジェニファー・ペドラサ議員は、地元ラジオのインタビューで法案可決の意義を強調しています。「コロンビアの結婚・早期結合の17%が未成年者を含み、農村部では25.4%にまで上昇しています。多くのケースで相手は6歳以上年上で、時には年齢が2倍の成人男性もいます」と現状を説明し、早急な対策の必要性を訴えています。

この法律では、婚姻最低年齢を18歳に引き上げ、全国のどの公証人も未成年者の婚姻を認めることができなくなります。さらにこの法案は単なる児童婚禁止にとどまらず、予防的・教育的なアプローチを含んでいます。子ども・青少年のための包括的な人生設計支援プログラムの創設や、先住民コミュニティの参画による予防政策の策定など、文化的な意識改革にも取り組む方針です。

もう一人の提出者であるアレクサンドラ・バスケス議員は、「この決定は未成年者と女性の権利擁護における重要な前例となります」と評価しています。児童婚は子ども時代を奪うだけでなく、性と生殖に関する権利の侵害、ジェンダーに基づく暴力へのリスク、学業の中断など、深刻な問題をもたらすと指摘しました。ペドラサ議員は「性的同意が認められる年齢は14歳以上ですが、それは適切な性教育と情報提供がなされ、個人の権利が守られた状況で、自分の意思で性について探求する自由が保障されることを意味します。」と説明。一方で「婚姻は財産権など長期的な影響を持つ決定であり、より慎重な判断が必要です」と強調しています。さらに同議員は「法改正だけでは文化や社会の変化は保証できません」とし、教育の促進、ジェンダー平等の推進、保健サービスへのアクセス改善、基本的権利の保障など、包括的な政策の必要性を訴えました。

 

先住民に配慮を

一方、ワユー族出身のマルタ・ペラルタ・エピエユー上院議員は、自身の家族の経験を語り、先住民族コミュニティへの配慮を求めています。

「私の母は13歳で最初の子を、15歳で私を産みました。父は当時63歳でした」とペラルタ議員は説明します。「私たちの文化では、初潮を迎えた女性は大人とみなされます。つい最近も、私たちのコミュニティの中で10歳の少女が妊娠しました」議員は法案自体には賛成しながらも、児童婚が文化として定着してしまっている先住民族社会への「移行期間」の必要性を訴えました。「この政策は、先住民族の内部で文化的な移行の期間が必要です」と指摘しています。

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©︎YouTube -Sen. Martha Peralta | #RostrosDelCongreso

国連からも児童婚の廃止を求められていたコロンビアが、2024年にこの歴史的な一歩を踏み出したことは、子どもの権利保護における明確なメッセージとなるでしょう。今後は法案の成立と共に、実効性のある政策実施が求められています。​​​​​​​​​​​​​​​​

 

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。2022年7月よりスペイン在住

ブログ: http://campesinita.com

Twitter: @maon_maon_maon

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