日本人コーヒー生産者が語るコロンビア
コロンビア人初のNBAプレイヤーが誕生!
コロンビアで歴代初のNBAプレイヤーが誕生しました。名前はハイメ・エチェニケ(Jaime Echenique)。
12月30日に行われた試合で試合終了までの3分4秒プレーし、翌日彼の母国コロンビアでは「コロンビア初のNBAプレイヤー誕生!」「歴史的な3分!」と様々なメディアで大々的に報じられました。
試合終了後のインタビューでは嬉しさのあまり涙を見せたハイメ・エチェニケ選手。ここにたどり着くまでの道のりは決して平坦なものではなかったのでしょう。
新たなコロンビアを代表するスポーツ選手の誕生に、世界中から祝福のメッセージが寄せられています。
¡Jaime Echenique hizo historia! El primer colombiano en debutar en la NBA. Tuvo su primera ovación en una defensa a Tacko Fall.
-- Isolation (@isolation_nba) December 31, 2021
Jugó 3:04 y no registró puntos en la victoria de Washington por 110-93. pic.twitter.com/n5S895x8dl
The first ever Colombian-born player in @NBA history! Congrats to Jaime Echenique on making history. #NBACallUp pic.twitter.com/3GBhzj7cTY
-- NBA G League (@nbagleague) December 31, 2021
ウィザーズと10日間契約
今回エチェニケ選手が契約を結んだのは、ワシントン ウィザーズ。2019年NBAドラフトにおいて八村塁選手が日本人で初めて1巡目で指名を受け入団したあのウィザーズです。
ウィザーズは12月30日八村選手の他5選手が安全衛生プロトコル入りをした事を受け、ガードのブラッド・ワナメイカー選手とセンターのハイメ・エチェニケ選手の2選手と10日契約を結んだ事を発表しました。
【契約情報】
-- ワシントン ウィザーズ (@washwizardsjp) December 30, 2021
ウィザーズはハイメ エチェニケ選手と10日間(NBAハードシップ特例)契約を結びました。
今シーズンGリーグの@CapitalCityGoGo
では14試合に出場し、1試合平均12.6得点、9.2リバウンド、FG成功率55.4%。#ウィザーズ| #DCAboveAll pic.twitter.com/jCE9vc8lp3
実は過去にNBAに近づいたコロンビア人は2人います。
1人目はアルバロ・テラン選手。215cmの高身長を生かしたコロンビアを代表する選手でした。1991年フィラデルフィア・セブンティシクサーズのプレシーズンにてプレイしましたが、レギュラーシーズン前に契約を終了されています。
2人目はブライアン・アンゴラ選手。2018年にオーランドマジックとエキシビジョン契約を結び、プレシーズンで2試合プレイをしましたが、レギュラーシーズンまで残ることはできませんでした。彼は今もコロンビアを代表する選手として活躍しており2021年には彼の所属するチームがバスケットボール欧州選手権で優勝しています。
今度こそコロンビア人初のNBA選手誕生か?と大きなプレッシャーを背負いながらここまで辿り着いたエチェニケ選手。この波に乗ってこれからどんどん活躍していってほしいですね。
努力家ハイメ・エチェニケ
カリブ海に面した街バランキージャに生まれたエチェニケ選手。彼がスポーツを始めたのは7歳の時。初めて熱中したスポーツはバスケットボールではなく野球でした。
しかし12歳の頃、学校の友達が野球に飽きてバスケットボールを始めた事をきっかけにエチェニケ選手もバスケットボールの道を歩み始めます。
当時のコーチであるウィリー・ロロング氏は、14歳になる前に既に190cmもの身長があったエチェニケ選手に当時からポテンシャルを感じていたそうです。更にロロング氏は「当時の彼はハンドリングも悪く体型も太り気味だったので生まれ持った才能があるプレイヤーではなかった。でも彼の努力が今日の結果を導いたんだ。」とコメントしています。
もうバスケットを辞めようと思っていた頃にバランキージャ代表に選ばれ、その後サンタマルタの代表チームに選出されます。そこでプレイしている間にエチェニケ選手は頭角を表し世間から注目を集めるようになりました。
アメリカのウィチタ州立大学を卒業後、2020年スペインで1年間プレイ。1月には右脚の膝蓋腱断裂という大怪我にも見舞われました。2021年8月にウィザーズとサマーリーグ、トレーニングキャンプ、プレシーズンの契約を結んで「ついにコロンビア人初のNBA選手か?!」と話題になりましたが、レギュラーシーズンが始まる前に契約を切られてしまいます。10月からはGリーグのキャピタルシティゴーゴーで14試合に出場し、1試合平均12.6得点、9.2リバウンドをあげています。(The Sporting Newsのデータ)
息子の活躍を誰よりも願っていたバスの運転手をしているエチェニケ選手の父親は、このニュースに動揺しすぎて勤務中に信号無視をしそうになったのだとか。父親はこのエピソードに「興奮し過ぎていたんだと思います。でも同時に少し切ない気持ちもありますね。近くでお祝いしてやれないんですから。」とコメントしています。
夢を見る価値はあるよ
試合後のインタビューはウィザーズの日本語公式Twitterアカウントで編集されたものを見ることができます。
本日の試合でコロンビア人初のNBA選手となった、ハイメ エチェニケ選手の試合後インタビュー「僕はこれまでに何度も断られてきた。その悔しさをモチベーションにした」#ウィザーズ|#DCAboveAll pic.twitter.com/oC45CsEmNy
-- ワシントン ウィザーズ (@washwizardsjp) December 31, 2021
こちらのインタビューでは編集でカットされていますが、インタビュワーの「コロンビアと南米にどんなメッセージを残したいですか?」という質問に対して、エチェニケ選手は即座に「夢を見る価値はあるよ」と回答した後、感情を抑えきれず顔をタオルで覆い泣き出してしまう場面もありました。
インタビュー内では過去に何度も断られてきたという経験を語る場面が複数回あり、彼が今までその悔しさをバネにここまで這い上がってきたのだということがこのインタビューと涙を見てひしひしと伝わってきます。
夢を諦めずにコツコツ努力し続けるエチェニケ選手。その姿はコロンビアの若者たちに大きな勇気と希望を与える事でしょう。
著者プロフィール
- 松尾彩香
コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。2022年7月よりスペイン在住
Twitter: @maon_maon_maon