日本人コーヒー生産者が語るコロンビア
南米最大のクリスマス飾りはコロンビアの小さな村にありました
コロンビア・アンティオキア県ベネシアに、ラテンアメリカ最大と言われるペセブレ(クリスマスの飾り)があります。
ベネシアは私が住んでいる地区の隣村。初めてコロンビアに来た2018年にたまたまクリスマスの時期にベネシアに訪れた際にこのペセブレに出会い、それ以来ベネシアのペセブレは毎年クリスマスの楽しみとなっています。外国人向けの観光ガイドブックには決して載っていない地元の人が訪れる隠れた名所を、今日はご紹介したいと思います。
ペセブレとは
日本人には馴染みがない「ペセブレ」ですが、カトリック教徒が多い南米やスペインのクリスマスにペセブレは欠かすことができません。
ペセブレはイエス・キリストが誕生したシーンを人形などを使ってミニチュアで再現したクリスマスのオブジェ。クリスマスの1ヶ月前くらいから各家庭では家の中にオリジナルのペセブレを飾ります。また教会、ショッピングモール内、街角でもこの時期になるとペセブレを見ることができ、人々の目を楽しませています。
ペセブレのメインとなるのはイエス・キリストが馬小屋で誕生した場面と東方三博士の訪問の場面ですが、羊などのフィギアや空箱を使って家を作り当時の人々の暮らしを再現したりもします。子供の頃シルバニアファミリーが大好きでよく遊んでいた私は、それぞれ違うペセブレのミニチュアの世界にどんなストーリーが隠されているのかを見るのを毎年とても楽しみにしています。
ベネシアのペセブレ
ベネシアはコロンビア・アンティオキア県の南西部にある自治体。コーヒーやバナナなどの農産物の生産が盛んな一方でエコツーリズムやバードウォッチングなどの観光業も盛んな村でもあります。
海外からの観光客はほとんどいませんが、大都市メデジンからバスで2時間ほどで行けるため週末は近隣都市からの観光客で大賑わい。ペセブレが展示される12月と1月の週末は特に観光客の数が増え、小さな村が人でごった返します。
観光客の目当てであるペセブレはラテンアメリカ最大とも言われ、その大きさはなんと250平方メートル。その空間の中には一つの村が形成されており、今年は2500人の人形の生活を見ることができます。人形たちの生活はこの地域の人々(パイサと呼ばれます)の暮らしをよく表しており、コーヒーを摘んでいる人、野良犬に追いかけられている人、河原でBBQしている人、闘鶏を楽しむ人など一つ一つが細かいところまで表現されています。
このペセブレを作っているのはベネシア生まれのルイス・フェルナンドさん。12歳の頃から家でペセブレを作るようになりました。30年前にこのベネチアの教会で段ボールなどを使用し初めてペセブレを作りましたが、何度か強い雨が降り壊れてしまいます。試行錯誤を繰り返し15年前から木材を使用する今のスタイルのペセブレを作り始めました。
「全ての作業を私が担当しています。木を使った動きなども全て私が手掛けているんです。そうしてアンティオキア県の村の日常生活を再現することに成功しました。例えば、公証人事務所のミニチュアの中では役人が書類にサインしている手の動きを見ることもできます。」
そうです、この2500の人形のうち120の人形が実際に動くのです。家の中を歩きまわる人やパン屋でパンを捏ねている職人、金を採掘している作業員などの愛らしい動きが人々の目を惹きつけます。
南米で一番大きいと言われているベネシアのペセブレですが、現在世界一大きいペセブレとしてギネスに申請しているんだとか。ギネスに登録されればベネシアはコロンビアの中でも有名な観光地となるかもしれませんね。
ベネシアのシンボルであり市民の誇りでもあるペセブレ。コロンビアのメディアEl Colombianoでも紹介されてれています。ぜひ一度動画で見てみてください。
著者プロフィール
- 松尾彩香
コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。2022年7月よりスペイン在住
Twitter: @maon_maon_maon