日本人コーヒー生産者が語るコロンビア
ディズニー「ミラベルと魔法だらけの家」舞台はコロンビア!映画を観る前に知っておきたい6つのポイント
ディズニー最新作「ミラベルと魔法だらけの家(原題 Encanto)」が、2021年11月26日(金)に公開されました。
この映画の舞台はコロンビア。監督は「塔の上のラプンツェル」や「ズートピア」の監督も務めたバイロン・ハワードです。
カラフルな映像と、一緒に踊りたくなるような音楽。出てくるキャラクターもとても個性的で、前半はそのユニークさに笑ってしまうようなシーンがたくさんありますが、後半は涙がぽろっと出てしまうようなシーンも。コロンビアがギュッと詰まったような映画をぜひ日本の皆さんにも観ていただきたいです。
「コロンビアがギュッと詰まった・・・」とは言っても、コロンビアの事をよく知らない方にとってはどこがコロンビアっぽいところなのかが分かりにくいと思うので、今回は映画の中の「コロンビアらしいところ」を紹介していきたいと思います。
ぜひ映画館に足を運ぶ前に目を通してみてください。
1、音楽
コロンビアの音楽はヨーロッパ、アフリカ、先住民からのインスピレーションを受けているためジャンルがとても豊富です。
バジェナト、クンビア、マパレ、チャンペタ、バンブコ・・・発祥は違いますがサルサもコロンビアを代表する音楽と言っていいでしょう。この音楽の豊富さを生かし、映画内では登場人物の感情や特徴を表すために様々なジャンルの音楽が全体に散りばめられています。
例えば予告編で流れている「Colombia, mi encanto」は、アコーディオンの音色が特徴的なカリブ海の音楽バジェナトを現代風にアレンジし、更に同じくカリブ海の音楽であるチャンペタのリズムをミックスさせたもの。
映画の中にもあるように、コロンビアでは家族で集まる時に音楽を流してみんなで踊ることは至って普通のことであり、コロンビア人は子供の頃から親や親戚の踊る姿を見てダンスのステップを身につけます。コロンビア人にはみんな音楽の血が流れていると言っても過言ではないほど。
とは言っても「Colombia, mi encanto」は日本人の我々が聞いても踊りたくなってしまうような魅力がありますね。
2、コロンビアグルメ
コロンビアといえばコーヒーですが、コロンビアの美食はそれだけではありません。
もちろん映画の中にコーヒーはたくさん登場しますが、他にもコロンビアを代表する食べ物が所々に登場します。
まずはコロンビア人のソウルフード「アレパ」
アレパはとうもろこしの粉を練って焼いた薄焼きパンのようなもの。コロンビア人は朝ごはんにはトーストを食べる感覚でアレパを食べ、お昼はチキンやスープなどに小さいアレパが添えられることも。
そして小腹が空いたらブニュエロ。
小麦粉とカリブ海のチーズを混ぜて揚げた揚げドーナツの様なお菓子。クリスマスや年末年始には欠かせないブニュエロですが、パン屋さんが店先で売っていることが多く、おやつ感覚で食べられているお菓子です。
他にもマドリガル家の一家団欒の食卓には首都ボゴタの名物料理アヒアコが並んでいました。
上に生クリームを少しかけて食べるのですが、味は日本のシチューそっくりです。
3、多様性
コロンビアはとても生物も文化も多様性に溢れた国。
人種でいえばラテン系だけでなくヨーロッパ系やアフロ系そして先住民と様々なバックグラウンドを持った人がいます。映画の中では肌の色や服装などでこのコロンビアの人種の多様性がうまく表されています。
そして忘れてはいけないのはコロンビアの生物多様性。
コロンビアはブラジルに続いて世界で2番目に生物の多様性が豊かだと言われています。
映画の中にはたくさんの動物が出てきますが、これらは全て実際にコロンビアのジャングルに生息する動物たち。
ジャガー、アリクイ、カピバラ。更に鳥や蝶などコロンビアに来れば日本で見ることのできない生物をたくさん見ることができるのです。
4、衣装
多様性が豊富なコロンビアは地区によって服装も様々。
例えばミラベルが着ている洋服はサンタンデール県のベレス地区のドレス。お祭りや特別なシーンで着られる洋服なんだそう。
そしてミラベルが持っているバッグはコロンビア北部のワユーと呼ばれる先住民の工芸品です。
映画の中にはふちの大きな帽子を被りシャツを着た人が度々見受けられますが、これはカリブ海沿いの街でよく見られる服装。また、ブルーノやカミロが着ているポンチョは首都ボゴタなど気温が低い地域でよく着られています。
5、風景
ミラベルが住んでいる家は高いヤシの木に囲まれていますが、この風景は実際コロンビアで見ることができます。
世界一高いヤシの木があるのはサレントという街のバジェデルココラ。コーヒーの名産地でもあり多くの観光客が訪れるスポットでもあります。
そしておばあさんの思い出の地である川もカニョクリスタルと呼ばれる実在しているスポット。海底の藻によって7つの色に輝く「虹の川」とも呼ばれている場所なんです。
6、コロンビアの悲しい過去も
ミラベルのおばあさんは若い頃、悪い人たちの暴力によって生まれ育った村を後にせざるを得ませんでした。
実際にコロンビアでは内戦時代から多くの人が故郷を追われているという事実があり、その数は1985年から2020年までで830万人にものぼると言われています。
ミラベルのおばあさんの様に情勢が不安定な環境で夫を亡くし、残された子供たちを女手一つで育てるというケースはコロンビアでは珍しくありません。ラテンアメリカにおいては女性が一家の大黒柱であることは少なくなく、ミラベルのおばあさんの様に一人で一家をまとめあげ、家族全員が幸せになることに大きな責任を感じている女性というのはラテンアメリカではごく一般的なお母さん像であったりもします。
コロンビアではディズニーがこういったセンシティブな部分を描くことに抵抗がある人もいる様ですが、それも含めてコロンビアであることは事実と言えるでしょう。
その他にもコロンビアがいっぱい
ここにまとめ切れないほどこの映画ではコロンビアらしいものをたくさん見ることができます。
所々コロンビアのジンクスが紹介されていますし、キャラクターの何気ない仕草にも「コロンビア人っぽさ」が出ていることには驚きました。
コロンビアに来たことがない方はコロンビアを「危険な国」「麻薬の国」と認識しているのかもしれませんが、コロンビアはそんなネガティブで暗い国なんかではありません。実際のコロンビアはこの映画の様に街中に音楽が溢れ、多様性豊かで、人々は手を取り合って助け合い、とってもカラフルで明るい国なのです。
コロンビアがギュッと濃縮された映画「ミラベルと魔法だらけの家」。ぜひ映画館に観に行ってコロンビアを感じてみてくださいね!
著者プロフィール
- 松尾彩香
コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。2022年7月よりスペイン在住
Twitter: @maon_maon_maon